麻倉未稀 乳がん発覚で文字通りの「八方ふさがり」を経験… 改めてわかった名曲「ヒーロー」の偉大さ
フラッシュダンスからヒーローへ
デビュー曲にも多用されていた英語。その後の曲からも、英語詞のイメージが強い麻倉だが、「当初は全然ダメだった」と苦笑する。 当時の所属事務所の近くに外国人モデルの事務所があり、そこにいたネイティブのモデルたちに発音を教わり、耳で覚えていくうちに英語詞も苦にならなくなったのだという。 そんな中で83年、今度は映画『フラッシュダンス』の主題歌でアイリーン・キャラが歌った『フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング』のカバーを歌うことになった。TBSドラマ『スチュワーデス物語』の主題歌として『What a feeling ~ FLASH DANCE』をシングルで発売した。 「あのときはとにかくレコーディングまで2週間ぐらいしかなくて。それなのに日本語詞も書いてといわれて」と戸惑ったが、アイリーン・キャラの原曲を何度も歌って、その日本語の対訳を含め、「直観に近い感じでまとめた」という。 ドラマは大ヒットし、自身の歌を多くの視聴者が楽しんだ。その経験は84年に発売した『ヒーロー…』にも連なる。
Youが主語
映画『フットルース』の挿入歌で、ボニー・タイラーが歌った『ホールディング・アウト・フォー・ア・ヒーロー』の邦楽カバーとなる『ヒーロー』は麻倉のほか、葛城ユキ、北川剛が歌ったが、原曲を含め、麻倉が歌った『ヒーロー』が他と異なるのは、さびで『I need a hero』と歌われている箇所が、麻倉版だけ『You need a hero』となっている点だ。 日本語版の作詞はいずれも売野雅勇。なぜ違うのか、売野に尋ねなければと考えつつも、いつも機会を逃していた麻倉だが、近年になってようやく尋ねることができた。売野の答えは「君の場合は全ての人に対して、頑張ろうぜ、という『ヒーロー』なんだよ」というものだった。 ただ麻倉自身は、そんな謎が氷解する前から、全ての人に対して力づけるように『ヒーロー』を歌い続けてきたのだ。