「『それ行けカープ』を流しながら」2歳長男とのお風呂が広島ノーヒッター右腕の癒し 記念球は「息子の遊び道具に」
◆日本生命セ・パ交流戦 広島4―0ロッテ(7日・マツダスタジアム) 広島の大瀬良大地投手(32)が、プロ野球90人目(102度目)の無安打無得点(5四球)を成し遂げた。球団では、12年4月6日のDeNA戦(横浜)での前田健太(現タイガース)以来5人目で、09年開場のマツダでは初。今季は巨人・戸郷に続き2人目となった。自身、交流戦では7連敗中だったが、5年ぶり、1829日ぶりの勝利。今月1日以来の首位返り咲きに導いた。 【写真】2019年結婚披露宴時の2ショット 総立ちの大歓声の中心で、大瀬良が両拳を突き上げた。最後129球目を投じたポランコの飛球が右翼・野間のグラブに収まった。5四球は与えたが、安打は許さなかった。「人生初」の偉業に「まだ信じられない。そういうものに無縁だと思っていた」と、穏やかな表情を浮かべた。 9回2死から連続四球で一、二塁となり、マウンドに内野陣が集まった。菊池の「あと一個、全員でアウト取るよ」という言葉に背中を押された。「なかなか上がれていなかった9回のマウンドに行く時、球場の『頑張れ~』という雰囲気がうれしかった」。本拠地で9回を投げきったのは、21年10月28日以来だった。 昨季は自己ワースト11敗(6勝)を喫し、今季は6年ぶりに同期の九里に開幕投手を譲った。それでも、悔しさ以上に感謝の思いでマウンドに立つ。昨年オフに3度目の右肘手術。苦しさも、家族を支えで乗り切ってきた。先月には長男が2歳になった。一緒にお風呂に入ることが最近の一番の癒やし。「『それ行けカープ』を流しながら。寝る前にも流して、気が狂いそうになるぐらい、誰よりも聞いていると思います(笑い)」。記念球の行き先を問われると「息子の遊び道具になると思う」と、父親の顔になった。 球団では12年の前田以来の快挙。当時は大学生だった。「映像は何度も見る機会はあった。『すげぇな』と思いながら、やってみたいとは思えなかったですけど」。15年オフの渡米までの2年間は、ともに投手陣を支えた。その後も投球映像を参考にすることがある。今も時折、連絡を交わし「勝手に頑張る糧にさせてもらっている」。09年開場のマツダで初のノーノー達成で手にした今季3勝目は、前田の通算45勝に次ぐマツダ43勝目(救援2勝を含む)。歴代単独2位に浮上した。 再び規定投球回に到達し、防御率1・07は、同僚・森下の1・16を上回るリーグトップ。特別な一勝でチームを今季6度目の3連勝、今月1日以来の首位返り咲きにも導いた。「次の登板が大事。次に向けて頑張ります」。この日だけは余韻に浸り、6年ぶりのVへまた、走り出す。(畑中 祐司) 大瀬良に聞く ―意識はいつから? 「5回くらいで『あっ、打たれてないな』とは思ったけど、7回途中くらいにポテンと1本、打たれるのかなと思っていた」 ―何が良かったのか? 「特に何が良かったというのはないんですけど、強いて言うなら、低めのいいところに集まっていた」 ―32歳での快挙。 「いろんなことを糧にして学びながらやっていきたいと思ってやってきたけど、そうやって浸れるのは1年が終わってから」 記録メモ ▼…広島の大瀬良がノーヒットノーランを達成した。5月24日の戸郷(巨)に次いでプロ野球90人目、102度目(セ43人目、46度目)。交流戦での達成は22年の今永(D)以来、4人目になる。 ▼…広島の投手では12年の前田健太以来、5人目(7度目=外木場義郎が一人で3度)。09年に開場したマツダでは初めての達成となった。内容は5四球を与えて対戦した打者31人、奪った三振は2つだけ。チームでは与四死球、対戦打者ともに最多。奪三振は72年の外木場と並んで最も少ない。 ▼…年齢は32歳11か月。ノーヒットノーランの最年長記録には06年山本昌(中)の41歳1か月があるが、広島では99年佐々岡真司の31歳8か月を上回る最高齢での達成となった。 大瀬良の妻でタレントの浅田真由(自宅でテレビ観戦)「最後までドキドキでしたが、チーム、スタッフ、選手の皆さんに支えていただいての達成だと思います。けがも多くて苦労してきた中での努力の通過点が、素晴らしい結果になって本当に良かったです。結婚記念日の1月29日と一緒の(球数が)129球だったことも喜んでいます!」 ◆大瀬良 大地(おおせら・だいち)1991年6月17日、長崎・大村市生まれ。32歳。小学4年から野球を始め、長崎日大では3年夏に甲子園出場。九州共立大を経て、13年ドラフト1位で広島入り。1年目に10勝8敗で新人王獲得。18年に15勝を挙げ、最多勝と最高勝率に輝き、リーグ3連覇に貢献。昨季まで5年連続開幕投手。188センチ、94キロ。右投右打。年俸1億8000万円(推定)。妻はタレントの浅田真由(34)。
報知新聞社