専門家が指摘する「2類相当に固執したことで高齢者の死亡者が増加した可能性」…新型コロナにおける厚労省の犯した大罪とは
『厚生労働省の大罪』#2
新型コロナウイルスのオミクロン株による致死率は世界中どこでも同じだったが、死者数は日本で目立って多かった。それには理由がある。厚生労働省や専門家会議が新型コロナの「2類相当」を維持することに固執したからだ。そのためにおこった廃用症候群とは。 【図を見る】新型コロナ新規感染者推移
『厚生労働省の大罪-コロナ政策を迷走させた医系技官の罪と罰』 (中公新書ラクレ)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
新型コロナ対策で厚生労働省は対応を誤った
新型コロナ対策で厚生労働省は対応を誤った。 私は、遅くともオミクロン株が主流になった2022年の1月か2月には、新型コロナを季節性インフルエンザと同じような扱いにすべきだったと考えている。 なぜなら、新型コロナがデルタ株からオミクロン株に置き換わって以降、世界的にみて致死率が低下し、コロナ肺炎が直接の死因というよりは、もともと要介護状態か基礎疾患があった高齢者が亡くなるケースが急増したからだ。 そういった高齢者は、地域の医療・介護システムの中で治療・ケアをしたほうが命は助かり要介護度が上がることも少ない。 ところが、感染症法上の2類相当となっていた間、高齢者や基礎疾患のある人は、保健所を介して大病院へ送られるという特殊なシステムの中で隔離され、地域の医療・介護システムの中でのケアができなくなったケースが多発した。 高齢者施設のコロナ陽性者が施設に留め置かれ、入院できなかったから亡くなったということもあるだろうが、入院して安静を強いられ弱って亡くなった高齢者も少なくないはずだ。 世界各国が、マスクの着用義務や行動制限の撤廃に動いたのは、人命より経済を優先したからではなく、オミクロン株になって致死率が下がったからだ。 民主主義社会では、政府が国民の行動制限を行うにはそれ相応の理由が必要であり、その期間は短いに越したことはない。 イギリス・オックスフォード大学のデータベース「アワ・ワールド・イン・データ(Our World in Data)」を用いて計算してみたところ、デルタ株以前は5%程度の日もあった新型コロナの致死率は2022年1月以降0.1%程度、あるいはそれ以下に急低下した。 1000人に1人が亡くなるというのは確かに重大かもしれないが、季節性のインフルエンザでも60歳以上の致死率は0.55%だ。 60歳未満では新型コロナも季節性インフルエンザも致死率0.01%というデータもあり、致死率からいっても「2類相当」に位置付ける意義はなくなっていたわけだ。