<わたしたちと音楽 Vol. 47>奥津マリリ(フィロソフィーのダンス) 自分らしくいるための、メンタルヘルスとの向き合い方
長くアイドルを続けるために自分の心に素直でいたい
――戸惑いを自分らしく解消しながら9年間活動を続けられていますが、長く続けるために大切にしていることはありますか。 奥津:メジャーデビューして結果が出せなければ次の若い世代に移り変わってしまうんじゃないかって、アイドルとしての賞味期限についての不安はずっと頭の片隅にあったと思います。でも、なんだかんだここまで9年続けられた。それには無理をしないことが大切でした。相手に悪意がなくとも、心が疲れてしまったときや進みたい方向とは違う方向に進みそうになったときには、自分を大切にして「NO」が言える状態であるべきだと思います。 ――若さが重要視されるというのも、アイドルの現状でもありますね。 奥津:体力も意欲も満ちている“若さ”はすごく強いものだけれど、今のフィロソフィーのダンスもすごく良い状態に仕上がっていると思うんです。若さゆえのがむしゃらではないかもしれないけれど、落ち着いた状態の大人の女性というか……!?「これはこれでいかがですか?」という感じです。 ――奥津さんがそこまで真っ直ぐに、活動を続けられているのはどうしてなのでしょうか。 奥津:一度、メンタルの調子を崩してしまったことがあって。そのときに一度立ち止まって「自分が本当にやりたいことってなんだろう」と考えて、音楽を続けていくのが人生最大の目標だ、と決心がつきました。一番大切なことを決められたので、そのタイミングでアルバイトも全部やめて、その後のさまざまな選択の優先度が明確になりました。
カウンセリングを受けてみて知った名前のつかないモヤモヤとの向き合い方
――ポッドキャスト番組『B-side Talk ~心の健康ケアしてる?』では、MCとしてメンタルケアについて発信していらっしゃいますが、印象に残っているエピソードはありますか。 奥津:いつも興味深いのですが、「スポーツとメンタルヘルス」がテーマの回で、勝利至上主義はスポーツ選手のメンタルを苦しめてしまう要因の一つになりうる、というお話を聞いて、アイドルやエンタテインメントの世界での活動にも親和性があると思いました。“売れたい”って欲望は特に良いカンフル剤になるかもしれないけれど、心をすり減らしてしまうこともある。だから結果を出すことだけにとらわれず楽しく活動してくのが大切なんだって。自分には遠いジャンルかなと思っていた話も、メンタルヘルスに繋がっていることも多くて、驚きました。 ――株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントは、エンタテインメント業界で活躍するアーティストやクリエイターを、心と身体の両面からサポートするプロジェクト「B-side」を展開しています。カウンセリングなどさまざまなプログラムが提供されているとのことですが、その制度について知ったときはどう思いましたか。 奥津:素直に、嬉しかったです。アーティストからすればすごくありがたいことですし、私たちを商品として消費するのではなく、人として大切にケアしてもらえるのは心強いです。実際に、カウンセリングを受けてみたことがあるんですよ。カウンセリングってあまり聞いたことがなかったし、私は特に何か悩みはなかったので、「そんな状態で行ってもいいのかな?」という思いもありました。悩み事に対して、それが合っているか間違っているのか、どんなことをすべきなのかアドバイスを受けるものだと思っていたのですが、実際のカウンセリングは、自分自身と対話をする感覚が強かったんです。自分で話すことで頭の中が整理されて、「私はこれが嫌だったんだな」、「これが不安なんだな」と、答えを見つけるための道をカウンセラーさんが整備してくれるような。漠然としたモヤモヤがある人はカウンセリングを受ければ、こんがらがった紐を解いていくことの助けになると思います。
プロフィール
奥津マリリ 5人組アイドルグループ フィロソフィーのダンスのメンバー。ソロではグラビアなどでも活躍する。ポッドキャスト番組『B-side Talk ~心の健康ケアしてる?』では、小原ブラスとともにMCを担当。フィロソフィーのダンスは、2015年に活動を開始し、2020年にソニー・ミュージックレーベルズよりメジャー・デビューしたアイドルグループ。2024年に結成9年目を迎えた。
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