「もう続けるしかない!」大規模アイスショーの舞台裏、フィギュアブームの追い風と羽生結弦の存在感
■「羽生結弦単独ショー」という“競合” フィギュアスケートの世界はこの数年で大きく変化し、集客に苦戦するショーは少なくない。「ファンタジー・オン・アイス」も、例えば2023年の宮城公演では、とくに初日である金曜日の公演で、会場後方に多くの空席が出た。コロナ禍以降、平日夜のイベントの集客が難しくなってきているとはいうが、理由はそれだけではないだろう。 会場の立地やアクセス面は要因として大きいが、もう1つ考えられるのが、羽生結弦さんの単独ショーや座長公演と観客が重複することに伴う集客不調だ。2022年のプロ転向以降、羽生さんの単独公演や座長公演が盛んに行われている。
もっぱら羽生さんを応援するファンであれば、より多く羽生さんの演技を見られる単独ショーや座長ショーの優先度が高くなるのは想像にかたくない。羽生さんがほぼ確実に出演することがほかのショーとの差別化要因の1つになっていた「ファンタジー・オン・アイス」に、「羽生結弦単独ショー・座長ショー」という“競合”が現れたのだ。 「彼の単独ショーや座長ショーの影響は、やはりあると思います。当社もその運営に関わっているのでわかっているし、現状を楽観視してもいない。ただ、お客さんを奪い合うというよりは、お互いに高め合いたいという気持ちです。『ファンタジー・オン・アイス』は、多くのスケーターやアーティストが一緒につくり上げるエンターテインメント。その魅力をうまく打ち出していきたい」(真壁社長)
チケットの売れ行きが非常に好調だったこの10年、ショーの内容を充実させるための投資には力を入れてきた。2023年に初めて導入したムービングステージ(SNS上ではロボット掃除機になぞらえて「ルンバ」と呼ばれた)もその一環だった。 真壁社長は、「この10年が特別で、それが元に戻るということなのかもしれない」とも吐露する。 10年の間、自身もスターの演技に魅了されつつ、しかし経営者としては「スター依存」への危機感を持ち続けた。だからこそ、「“フィギュアスケートファン”、“ファンタジー・オン・アイスファン”を増やしたい」という変わらぬ思いを強調してきた。