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中国軍の進める「超限戦」は倫理なしのナンデモアリノ戦略だ。現在も台湾や欧米先進国に「サイバー真珠湾」、「デジタル911」攻撃を仕掛けており、CISAのジェン・イースタリー長官も「中国がもたらす脅威は想像上のものではなく、現実である」と言っている。 【写真】中国の若者たちに「中毒患者」が激増中 ところが「善意の塊」である日本政府はこれらの脅威に対して何の手立てもしようとしていないと、日本を代表する中国ウォッチャーである国際政治評論家・宮崎正弘氏は語る。 ※本記事は、『悪のススメ―国際政治、普遍の論理』より一部を抜粋編集したものです。

AI時代の新しい「陰謀」

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中国軍の戦略思想は「超限戦」(Unrestricted Warfare)である。基本は孫子の兵法であり、卑怯とか武士道とか戦闘の原則とか敵将を褒めるとかは端から無視される。倫理はないが、ほかはナンデモアリの世界だ。 米国の国防、安全保障研究シンクタンクから矢継ぎ早に出されるレポートは「サイバー真珠湾」、「デジタル911」を中国が仕掛けるという早期警戒の呼びかけだ。 「中国のハッカー軍団が米国(ならびに台湾と西側先進国)のインフラ、とくに送電網、貯水池や処理場、パイプライン(水道管、ガス管を含む)、交通・通信システムなどの主要なインフラを標的に攻撃しようとしている」 中国が標的とする国々の生活に不可欠なすべてのシステムを破壊する目的に基づく。 電気が使えなくなれば、家電はもちろん使えない。充電が不可能になればパソコンも携帯電話も使えない。貯水池や処理場が破壊されれば、蛇口からは水が出なくなり、珈琲も紅茶も飲めず、炊事、洗濯もできない。 ガスが切れると台所も機能しない。交通インフラが襲撃されると、通勤電車も新幹線も動かず。出張や観光はもちろん、移動も機能不全に陥る。下水処理場が麻痺したら疫病の蔓延も考えられる。そもそも工場が稼働しない。物流が止まれば社会は大混乱とパニックに襲われる。この「インフラ破壊をサイバー攻撃で行う」。その準備を整えたのが中国である。 通信が途絶えると政府も軍も警察も国を守ることができなくなる。機関銃も大砲も爆撃機も不要、弾丸は一発も発射されない。「超限戦」=「孫子の兵法」の現代版である。 「西側は、中国共産党が悪意のある脅威と正しく認識する必要がある。防御の第一はこの認識である」と主張するのは「ゲートストーン研究所」のピータ・ホークストラで、「TikTokは(中国の)戦争の武器だ」と定義したゴードン・チャン(ベストセラー『来たるべき中国との戦争』の著者)らがメンバーに名を連ねる有力シンクタンクだ。 2022年7月6日、従来にないイベントが行われた。クリストファー・レイFBI長官と英国MI5のケン・マッカラム長官が史上初めて共同で公開の場に登壇し、「増大する中国、安全保障上の課題」を話し合った。中国の「超限戦」への取り組みが緊急に必要であると訴えたのだ。