山下智久「嘘がつけない男」を演じることで、本音が言いやすくなった。個人事務所を立ち上げ、海外経験を経て得た〈自己主張〉
◆本音でつきあう大切さを実感 そんなふうに考えるようになったのは、ドラマの役柄の影響もあります。僕は2022年に、不動産取引の裏側を描いたドラマ『正直不動産』に出演しました。僕が演じた永瀬財地は、契約成立のためなら嘘もいとわない、不動産屋の敏腕営業マン。 ところがある日、祠と石碑を壊してしまったことで祟られ、《嘘がつけない体》になってしまいます。目の前の相手に本音しか言えないためにトラブルも起こるのですが、最終的にはそれが良い方向へ転がっていく。 最近は、デジタルの「おかげ」なのか「せい」なのかわかりませんが、コミュニケーションが取りやすくなる一方で、人と人との実質的な距離が離れていっている気がします。お客さんや仕事仲間と嘘抜きで向き合う永瀬のように、人との繋がりを強くするためには、面と向かって本音で意見を言い合うことが必要なんじゃないか。彼を演じて、そんなことを強く思うようになりました。 ドラマでは、永瀬が嘘をつこうとするとびゅーん! と強風が吹いてきて、どうしても本音を言わずにいられなくなる、という設定ですが、最近はプライベートでも友だちが、「ほら、言っていいよ!」と僕をあおいで風を送ってくるように(笑)。おかげで本音を言いやすくなりました。
不動産への意識も変わりましたね。細かい法律のルールがある分野ですが、騙そうと思えば簡単に相手を騙せてしまう。家というのは、人生でもっとも長い時間を過ごす場所です。知っているといないとでは大きな差が出てしまうので、自分だけでなく家族のためにも最低限の知識は身につけておくべきだなと思いました。 ちなみに、僕自身が住まいを選ぶ際に大事にしているのは「日当たり」です。日は当たれば当たるほど気分が上がるので。パーッと日が差す部屋で朝を迎えると、「よし、今日も頑張ろう!」と背中を押され、人生を楽しく過ごせる気がするんです。 今回、続篇となる『正直不動産2』で再び永瀬を演じています。俳優の仕事をしていくうえで続篇をやらせていただけるのは、本当に光栄なこと。今は発言ひとつにも気をつけないといけない時代で、生きづらさを感じている人も多いと思います。ぜひ嘘のつけない永瀬を見て、本音で生きる爽快さ、気持ち良さを感じていただければ嬉しいです。 ドラマは最初のシーズンのときからアドリブが多く、不動産屋に来るお客さんとの会話など、自分でセリフを作っているシーンも結構あります。当日の朝に監督から「ここで何かお願いします」と言われて、一か八かでやってみたり。ぜひ、そのあたりにも注目してみてください。 また前シーズンに続き、今回も山崎努さんとご一緒しています。努さんはドラマ『クロサギ』でお世話になって以来、僕が師匠として慕っている人。常に力をくださる、人生の大先輩です。こうして何度も共演できるのは決して当たり前ではないことを心に留めて、ワンシーンワンシーン、一言一言、味わいながら演じています。