共働き夫婦、遺族年金が少なくなるって本当?
公的年金は、老齢年金、障害年金と遺族年金の3種類あります。どの年金もリスクに備える年金です。1996年から共働き夫婦が増加する中、一家の働き手の人や年金を受け取っている人が亡くなった時、要件を満たす遺族の人に支給される遺族年金はどのように計算されるのでしょう。 共働き夫婦である、Sさんは友人のHさんから、「共働きだと、遺族年金が減らされる」と聞いたそうです。今回は共働きだった夫婦が、65歳からの老齢年金を受給中に亡くなった場合の遺族年金について解説します。
共働きSさん夫婦の遺族年金額
Sさん夫婦は75歳を機に、終活について真剣に考え始めました。お互いどちらが先に亡くなるか分かりませんが、日本人の平均寿命からすると、妻のほうが長生きするだろうと思っています。その際、妻が生活に苦労しないように、遺族年金が受け取れるのか心配し、年金事務所に試算してもらうことにしました。 現在、Sさん夫婦の年金受給額は図表1のとおりです。 【図表1】
ここで、遺族年金には国民年金部分である、遺族基礎年金と厚生年金保険部分である、遺族厚生年金があります。遺族基礎年金は要件を満たした子、または子のある配偶者が受け取ることができるため、子がいなければ支給されません。 Sさん夫婦は65歳以上で老齢年金を受給中であるため、65歳以上の人は、原則、自身の老齢基礎・老齢厚生年金を受け取り(図表2左側)、遺族厚生年金は差額支給(図表2右側)となります。 【図表2】
遺族厚生年金の計算は、亡くなった人の厚生年金の加入期間や報酬の額をもとに計算します。亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。 Sさん夫婦の遺族厚生年金額は夫に万一のことがあった場合、131万5440円×3/4=98万6580円です。ただし、妻自身の老齢厚生年金があるため、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が支給停止となります。Sさんの妻が受け取る遺族厚生年金は、98万6580円-89万8884円=8万7696円です。 妻の年金額は、妻の老齢年金と遺族年金あわせて178万1580円ですが、2人で頑張って働いて社会保険料を払ってきたのに、遺族年金が少なすぎるのでは……と感じるかもしれません。