米投資銀行のブラック労働の実態、週100時間勤務で「過労死」も
米国の投資銀行業界の過酷な労働環境に対する懸念の高まりを受け、業界大手のJPモルガンとバンク・オブ・アメリカ(BofA)は、若手バンカーの過度な労働時間を抑制する新たな取組みを導入する。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によると、JPモルガンは若手バンカーの勤務時間を週80時間までに制限し、BofAは労働時間をより厳密に監視するための新たなタイムキーピング・ツールを導入するという。 WSJによると、これらの変更は、若手バンカーが勤務時間を「過少申告するよう指示されていた」という疑惑を受けてのものだという。投資銀行業界は、莫大な富と名声を得ることが可能である一方で、その過酷な労働文化が批判を浴びてきた。若手バンカーたちは、出世の階段を上るために週100時間以上働き、ワークライフバランスを犠牲にしてきた。 シニア層はよりフレキシブルな働き方が可能だが、若手は面倒で時間のかかる仕事を任されることが多く、深夜までデスクで作業に追われている。 ■極端な労働文化 今年初め、ある銀行員が死亡したことをきっかけに、投資銀行の厳しい現実が明るみに出た。ニューヨーク市監察医務局は、グリーンベレー出身でBofAのアソシエイトだった35歳のレオ・ルケナスが、5月2日に急性心筋梗塞で死亡したと発表した。 検死報告書は、ルケナスの労働時間と死因との因果関係を明確にしていないが、あるエグゼクティブ・リクルーターは、彼が週に100時間以上勤務していた実態を明らかにした。グレイフォックス・リクルートメントのマネージング・パートナーであるダグラス・ウォルターズによると、ルケナスは勤務時間がより短いポジションを探しており、彼から「週に110時間勤務することは金融業界では一般的なのか?」と質問されたという。 当時、BofAには、「バンカーズ・ダイアリー」と社内で呼ばれている燃え尽き症候群を監視するシステムが導入されており、勤務時間が週100時間を超える従業員は、人事部による健康チェックを受けることになっていたという。しかし、WSJの調査によると、この規則はしばしば無視され、上司が部下に労働時間を虚偽申告するよう指示したケースもあったという。 同社は最近、時間管理のプロトコルをアップデートし、米国を拠点とする若手スタッフに対して勤務時間の記録を従来の週単位ではなく一日単位に変更するよう義務付けた。強化されたツールは来週から稼動する予定で、現在進行中のディールや仕事のアサインメント、上司などに関する詳細な情報の入力が要求される。さらに、若手バンカーが自分の仕事量を1から4までの尺度で示すことができ、より包括的でリアルタイムに彼らの勤務実態をモニタリングすることが可能になる。