核融合実験炉「ITER」運転開始は34年に、コロナ禍の影響で9年の遅れ…「リスク抑えながら計画進める」
日米欧などがフランスに建設中の「国際熱核融合実験炉(ITER(イーター))」について、計画を進めるITER機構のピエトロ・バラバスキ機構長は26日、日本メディアの取材に応じ、運転開始を2025年から34年に9年遅らせると明らかにした。
これまでの計画では、核融合反応を起こす条件となる「プラズマ」を生成する初期運転を25年に開始し、最終目標である重水素とトリチウムの核融合反応を伴う本格運転を35年に始めることにしていた。
ただ、コロナ禍の影響などで工事が遅れているため、同機構は計画を変更すると表明。より技術的ハードルが低い重水素同士の核融合反応を初期運転と定義し、運転開始目標を34年にした。さらに、重水素とトリチウムの核融合反応を伴う本格運転も39年に延期した。
訪日中のバラバスキ機構長によると、フランスで21日まで開かれていたITER理事会で、こうした変更案について参加国・地域が大筋合意した。
07年から建設が始まったITERは当初、19年の運転開始を目指していた。ただ、開発は難航し、運転開始目標の変更は今回が2回目となる。バラバスキ機構長は「リスクを抑えながら計画を進める考え方が認められた」と話した。
日本はITERでの開発経験を生かし、30年代に核融合発電の実証炉を国内建設する目標を掲げ、国家戦略の改訂作業を進めている。