線路保守作業員を守れ! 列車接近、アプリで通知 静岡鉄道、全国初導入「心の準備、大きな意味」
静岡鉄道(静岡市葵区)は、鉄道の線路保守作業員と列車の接触事故発生リスクを軽減するアプリケーション「トレりん」を全国で初めて導入した。静岡県内では10日に、JR高塚駅(浜松市中央区)付近の線路上でレールの保守点検をしていた作業員が貨物列車と接触し死亡する事故が発生したばかり。テクノロジーを駆使した新たな保安支援システムで、円滑な列車運行と作業員の安全確保の強化を図る。 アプリは、列車先頭車両に設置したスマートフォンの位置情報をGPS(衛星利用測位システム)で把握し、作業地点から一定の距離に列車が接近すると、安全を監視する列車見張り員のスマートウオッチが振動する仕組み。2021年に東京都のIT企業「リアルグローブ」に開発を依頼した。23年4月からテスト運用し、今月に本稼働を始めた。リアル社は今後、静岡鉄道の導入実績を基に全国の鉄道会社へ利活用を呼びかける。 静岡鉄道では保線作業時に、1班あたり列車見張り員を1人か2人配置。目視で列車接近を確認し、笛やメガホンで作業員に退避を促しているが、常に緊張を伴う作業のため見張り員の心的負担が課題だった。アプリ導入で目視とのダブルチェックが整い、より早く確実な退避行動に移せる。 同社では近年、保線作業中の接触事故は発生していないが、急カーブなど見通しの悪い箇所では避難指示が遅れるヒヤリハット案件が報告されていたという。鉄道部の高田諒平保線区長は「振動による物理的な警告で心の準備ができるだけでも大きな意味がある」と話した。
静岡新聞社