Dios、会場全体がダンスフロアへと変貌! 『ガソリンツアー 2024』全国ツアー最終公演に密着
たなか(vo/前職・ぼくのりりっくのぼうよみ)、Ichika Nito(g・comp)、ササノマリイ(key・comp)によるバンド、Diosが全国ツアー『Dios ガソリンツアー 2024』のファイナル公演を東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で開催した。新作『ガソリン EP』を携えた今回のツアー。最終公演で3人は、さらに進化した音楽性とポジティブなメッセージ、そして、ライブバンドとしてのポテンシャルをはっきりと表明してみせた。 【全ての写真】『ガソリンツアー 2024』最終公演 白を基調にした舞台にはドラム缶をモチーフにしたオブジェ(約30個)が置かれている。これはもちろん『ガソリンツアー』というタイトル、そして、新作『ガソリン EP』から派生したものだろう。白の清潔な雰囲気と“ガソリンが詰まっている”というイメージが鮮やかなコントラストを作る中、Diosのたなか、Ichika Nito、ササノマリイ、サポートミュージシャンのオオツカマナミ(b)、山本晃紀(ds/LITE)がステージに登場、大きな歓声の中でライブはスタートした。 1曲目は新作『ガソリン EP』の収録曲「Loopback」。エレクトロスウィングを取り入れたダンサブルなトラック、“慣性に抗い、次に向かってジャンプしろ”というメッセージを刻んだリリックが響き合い、Diosの音楽世界に一気に引き込まれる。ササノは冒頭からハンドクラップを要求。会場全体に心地よい一体感が生まれた。さらに美しくも鋭利なギターフレーズとドラマティックなボーカルが互いを高め合う「Bloom」(たなか、笑顔でめっちゃ楽しそうに歌ってました)、「渋谷、アガっていけそうですか? 声出していけそうですか? 天国まで行けちゃいそうですか?」(たなか)という言葉から始まった「天国」(サビのフレーズは観客とシンガロング)と1stアルバム『CASTLE』の収録曲を連続で披露。そして、2ndアルバム『&疾走』の最後に収められた「裏切りについて」を続け、キャリアを行き来するようなオープニングとなった。 「『ガソリンツアー』は6カ所を回るツアー。最終日はLINE CUBE SHIBUYAということですごい楽しみにしてたんですけど、みなさんはどうですか!?」(たなか)とフレンドリーに話しかけるたなか。「懐かしい曲やりますね」と紹介された「劇場」からは、Diosが持つ奥深い音楽性をダイレクトに体感できるシーンが続いた。きらびやかで切ないIchikaのギターに導かれた「また来世」は、憂いを帯びたメロディが心に残るミディアムチューン。〈あなたの痛みはあたしに届かない/あたしの後悔もあなたに届かない〉というラインが会場全体に広がり、ギュッと胸を締めつけられる。 続いては新作『ガソリン EP』の収録曲「トロイ(feat.Daoko)」。原曲にはDaokoがゲストボーカルとして参加しているのだが、ライブではササノがコーラスを担い、新たな表現を提示していた。ラテンの香りが漂うアレンジも斬新だ。「ラブレス」では〈Repeat after me〉〈“あなたに会いたい”〉〈聞かせてよ〉〈“あなたに会いたい”〉というコール&レスポンスが発生し、バンドと観客の距離がさらに近づく。そして、ライブ前半のハイライトは「Virtual Castle」だった。まずはしなやかな4つ打ちのキックに合わせてオーディエンスが手拍子。「まだまだ踊れますよね!?」というたなかの煽りによって凄まじい歓声が上がり、会場全体がダンスフロアへと変貌していく。“幻想の城の舞踏会”をテーマにした歌詞も素晴らしい。それはつまり“せめてこのとき(ライブ)だけは楽しく踊っていたい”という切実な願いそのものなのだと改めて実感させられた。 「Diosがこんなライブをやれるようになるなんて......というのは、こっちの話なんですけど(笑)。みんながこんなに踊ってるのを見れて、とてもうれしいです」(たなか)「みなさん、『ガソリン EP』聴いてくれましたか? いちばん好きな曲、教えて!」(Ichika)というトークを挟み、陰鬱なテイストの楽曲が続けるシークエンスへ。自分自身を苦しめ、〈眠るように消えていけたら〉という妄想に捉われた状態を描いた「Misery」、“僕から君を奪わないでほしい”と願う「逃避行」、外界を遮断している状況を暗い部屋に例えて表現した「ダークルーム」、そして、自分の世界に留まる“あなた”に向けて〈ただ あまりにも/怯えててもつまらなくない?〉と語り掛ける「王」。ダークな世界観を増幅させるIchikaとササノのプレイ、歌詞に込めた暗鬱なエモーションを生々しく歌い上げるたなかのボーカリゼーションも素晴らしい。「『&疾走』以降、前に向いてやっていこうというモードになってるんだけど、どうしても前を向けない日もありますから。悲しみにもちゃんと寄り添えるDiosでもありたいと思っています」というたなかの言葉も心に残った。