森保監督が28歳FW「大橋祐紀」を初招集した意味 W杯最終予選「最大の山場」アウェーのサウジアラビア戦にどう臨むか
3年前の反省
しかし3年前は思わぬ落とし穴があった。それは「選手の大半はヨーロッパで涼しいなか、30度以上の気温のなかで2日で暑熱対策をしなければいけなかった」(森保監督)ということだ。 当時は10月4日にジェッダに集合し、現地時間18時30分から練習をスタートしたが、集合したばかりなので負荷はかけられない。翌5日も同じ時間から練習し、6日は公式練習で7日のサウジアラビア戦に臨んだ。 これまでの慣例からすると、初日はコンディショニング程度で負傷者は室内練習場のマシントレーニング。翌日からは非公開で紅白戦など実戦を想定した強度の高い練習を行い、試合前日はセットプレのー確認など負傷を考慮した練習メニューというパターンである。 その内容から3年前は、練習らしい練習は5日と6日の2日間だけ。ほとんどぶっつけ本番での試合を繰り返してきた。こうした3年前の反省から、今回の予選からチャーター機を用意するなどして、9月の2試合ではホーム、アウェーとも3日間の練習日を確保した。 山本昌邦テクニカル・ナショナルダイレクターも、 「暑熱のところでは(ヨーロッパと)かなり落差はある。普段はバラバラに練習していたが、代表では1回の練習とミーティングがとても大きな意味を持つ。9月には試合までに各3日間あった」 と1日間の日程的な余裕の意義を強調した。
可能な限りの準備
かつて1996年アトランタ五輪では西野朗監督、2000年のシドニー五輪と02年の日韓W杯ではフィリップ・トルシエ監督のコーチを務め、04年アテネ五輪の代表監督を務めるなど中東での試合経験が豊富な山本氏は、「1時間の時差の解消には1日かかります。中東とは国によって5~6時間の時差がある。このため少なくとも5~6日前に現地入りするのが理想です」と話していた。 残念ながら今予選もそこまでの時間的な余裕はない。しかしながら96年以降、五輪とW杯のアジア予選を突破した経験の蓄積と、3年前のW杯アジア最終予選から学んだコンディショニングの重要性から、今予選では経済的なバックアップもスタートさせた。可能な限りの準備は整えた。あとは結果で応えるだけ――と言っても言い過ぎではないだろう。
六川亨(ろくかわ・とおる) 1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。 デイリー新潮編集部
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