酔うと“一人紅白歌合戦”開催、悪ノリも…西田敏行さん“役者魂”暴走の大はしゃぎ酒席エピソード
「西田さんとの宴席は、とにかく楽しくて愉快。常連だった下北沢の小料理店では、すでにスターだったのに顔馴染の客とも気さくに言葉を交わされていました。お酒が進むと、まわりを楽しませたいというお気持ちからか、西田さんの『ものまねショー』が開催されるんです」 そう言って昔を懐かしむのは、俳優・西田敏行さん(享年76)と親交があった大手広告代理店関係者のA氏。A氏は明治大学(西田さんは中退)の後輩ということもあって、公私ともにかわいがられていたという。 10月17日、都内の自宅で亡くなった西田さん。翌日、所属事務所が公式サイトで、死因は「虚血性心疾患」であると発表した。芸能界から追悼の声が多く寄せられたが、今回A氏が、西田さんとの知られざる酒席エピソードを明かしてくれた。 「映画などで共演した勝新太郎さんや丹波哲郎さんなど、大先輩の豪快エピソードを話してくれるのですが、だんだんその大物俳優の仕草や声色をそっくりそのままに演じはじめるんです。たとえば、『釣りバカ日誌』でコンビを組んだ三國連太郎さんの話をしていると、“スーさん”になりきって話すので、一同大爆笑でした。 あと、『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドのものまねは、老後のかすれ声を再現するなど秀逸でしたね。忘れられないのは、三國さんが出演した『復讐するは我にあり』での名シーン。混浴の露天風呂で倍賞美津子さんの乳を揉みしだく伝説のシーンを再現するのですが、悪ノリがエスカレートして三國さんがおっぱいを揉んでいる手つきから、倍賞さんが喘いでいるところまで二役やってくれました」 歌手としても『もしもピアノが弾けたなら』をヒットさせ、『NHK紅白歌合戦』にも出演したほどの美声の持ち主。 「あるときの忘年会では、まるで“一人紅白歌合戦”みたいに、都はるみさんの『北の宿から』やジュディ・オングさんの『魅せられて』、八代亜紀さんの『舟唄』をものまねで熱唱してくださいました。まわりのお客さんも最初は驚いてましたが、一緒になって大盛り上がりでしたよ」 女の子がいるお店に行っても、誰よりも場を盛り上げようと大はしゃぎだったという。 「芸能界の裏話をおもしろおかしく話すので、女の子たちは大喜びでした。『好きな芸能人は誰?』と聞いて、女の子たちも気を使って『西田さん』と答えようものなら、バカでかい声を張り上げて『ちょっとみんな、今の聞いた!』と、大喜びではしゃぐ姿が子供みたいでしたね(笑)」 仕事も遊びも常に全力だった西田さん。実力派俳優として数多くの映画やドラマで長年第一線で活躍してきたが、NHK大河ドラマには三度主演に抜擢されるなど12作品に出演している。1990年に放送された『翔ぶが如く』では、主役の西郷隆盛を演じた。 「西田さんは、まだ幼いときにお父様を亡くされています。もともとは今井姓だったのですが、その後にお母様が再婚されて西田姓になりました。西田さん自身は福島県郡山市の出身なので、西郷隆盛役で出演を依頼されたときは断わるつもりだったそうです。 ところが、西田家がかつて薩摩藩士として島津家に仕えていたそうで、それを知った西田さんは『西田敏行として生きる以上は、自分で覚悟を決めた』と、西郷役を引き受けた理由を語っていました」 最後にA氏は、代理店時代に関わったCM撮影現場での秘話を語ってくれた。 「私が関わったCMでは、巷で言われている『セリフがめちゃくちゃ』というほどではなかったですが、西田さんはご自身でも事前にいろいろとお調べになって撮影に臨まれていました。 撮影中『監督、ここはこういうのはどうかな?』と提案することもよくありました。それをスタッフが『いいですね』となると、満面の笑みを浮かべて『でしょ! でしょ!』と喜ぶんです。 『お芝居のときはさあ、西田敏行じゃないのよ。西田が演じてる役柄が自然と台詞というか、その心情を吐露するんだよね』と、よくおっしゃっていましたが、それで勝手に台詞を変えられる演出家や脚本家はたまったもんじゃなかったでしょうね(笑)。 そのことについて聞くと、『(共演した)○○なんか、台本と台詞が違うからキョトンって顔してたのよ』と大笑いしてました。さらに、『どんな台詞がくるかわからないから、共演者もちゃんと芝居に集中できるのよ』と。まあ、見事な理論構築ですね(笑)。 体調がすぐれないという話は聞いていましたが、もうあの子供みたいな喜色満面の笑顔を見られないと思うと寂しく思います。やっぱり、西田敏行さんは唯一無二の役者でしたね」 圧巻の役者人生だった。
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