「地獄に落ちた心境でした」死闘となったアディショナルタイムの攻防を経て京都橘に逆転勝利。富山一の加納監督が思わず漏らした本音【選手権】
「早く終わってくれ」
[高校選手権2回戦]富山一(富山) 2-1 京都橘(京都)/12月31日/味フィ西 【PHOTO】“選手権”から日本代表へ羽ばたいたヒーローたち! 当時の秘蔵ショットで振り返る! 2023年12月31日、第102回全国高校サッカー選手権大会の2回戦が各会場で開催された。味の素フィールド西が丘では富山一と京都橘が激突。立ち上がりから激しい攻防が展開された。 オーソドックスな4-4-2システムで臨んだ京都橘に対し、富山一が5-2-3システムを採用した試合で徐々に流れを引き寄せたのは、前者だった。FWでキャプテンの西川桂太を起点に攻撃を仕掛けると、前半15分に山本洸生のロングスローから宮地陸翔がヘッドで落としたボールを西川が右足で蹴り込む流れで、京都橘が先制したのだ。 リードした京都橘は長身CBの池戸柊宇を中心に自陣に放り込まれたボールを跳ね返しつつ、西川、宮地、さらに両サイドの吉野歩夢と久保翔大らが絡むアタックで追加点を狙った。28分にカウンターから富山一に決定機を与えるなどピンチもあったが、水際のディフェンスで凌ぐ粘り強さも披露。総合的に見ると、前半は京都橘のペースで進んだ印象だった。 一方、巻き返したい富山一はじっくり守りながらもカウンターで反撃。そして後半11分には右ウイングバックの谷川智哉からのクロスをCF谷保健太がヘッドで合わせる形で同点に追いついた。その前に京都橘の攻撃を何度か防いでいただけに、チームに勇気をもたらす1点となった。 スコアは1-1。時間の経過とともにオープン気味の展開となり、どちらに勝利の女神が微笑んでもおかしくないゲームに。基本的には京都橘がパスを繋いで押し込むも、富山一も早めに前線に蹴り込む戦い方で応戦と激しいバトルが繰り広げられた。 そんな死闘を制したのは富山一だった。後半35分にCKのチャンスから相手の反則でPKを得ると、これを多賀滉人が冷静に決めてチームは2-1と逆転に成功したのだ。 試合後、一方的に押し込まれた後半アディショナルタイムの激闘を振り返り、富山一の加納靖典監督は「地獄に落ちた心境でした」と思わず本音を漏らした。 「(試合に)選手を送り出す時も『フィールドの上は地獄かもしれんぞ』と伝えて、苦しいけど生き残るために自分ができることを精一杯やろうと、できれば仲間を助けろと。本当に(後半のアディショナルタイムは)地獄でした(笑)。早く終わってくれと。まさに(地獄だ)と思っていました」 苦しい時間帯を耐え凌いで掴んだ勝利。タイムアップの瞬間、地獄から生還した選手たちは最高の笑顔を見せていた。 取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)