佐藤拓雄アナ 「〇〇ぶり」正しく使えていますか…仙台放送アナウンサーコラム「書ける」
職業柄、というのか、職業病、と言ったほうがよいのか、テレビでも新聞でも、言葉が気になって仕方ないということがよくあります。 ここ数年気になっているものの一つは、「ぶり」。魚のブリではありません。「○年ぶり」などと言う時の「ぶり」です。 先日、あるインタビューで「小学生ぶりです」と答えているスポーツ選手がいました。このところ、「ぶり」をこのように使う人がとても多く、私はその度に違和感を覚えます。 辞書を引くと、「ぶり」の前には「経過した時間を表す語」が来るもので(つまり「1か月ぶり」とか「10年ぶり」とか)、出来事や日時が来る表現(つまり「小学生ぶり」のような使い方)は誤りだとされています。ですから、この場合「小学生以来」というのが適切なのであって、違和感の原因はそこです。 このケースで、仙台放送ではインタビューのその部分をそもそも放送しなかったのですが(ただし、言葉が誤りという理由ではなく、ニュースの構成上そうなったようです)、新聞では、発言をそのまま引用し「小学生ぶり」と書いたものと、「小学生以来」と言い換えたものに分かれていました。 どちらだって意味は通じるではないか、という意見もあるかもしれませんが、もっと極端な例として、「(西暦)2000年以来」と言うべきところを「2000年ぶり」と言ったらどうでしょうか。「2000年前の話?」となってしまいますよね。 全ての視聴者に疑問のない放送を届けることは、放送する側の責任だと私は思います。だからこそ、違和感なく、間違って伝わることのない言葉で伝えることが大切ですが、一般の人ならまだしも、アナウンサーにまでこのような「ぶり」を使う人が出てきていて、実に憂慮すべきことだと思っています。
報知新聞社