新型BMW5シリーズツーリングは、今や少数派に嬉しい1台だった 改めて考えたいワゴンの魅力とは?
日本に上陸した新型BMW「5シリーズ・ツーリング」は、万能選手だった! サトータケシがリポートする。 【写真を見る】新型BMW523d xDriveツーリングMスポーツの内外装など(18枚)
セダンに続いて導入
最近、とんと見かけなくなったのが、ネクタイとステーションワゴンだ。 NHKのアナウンサーもノータイだし、トヨタのホームページを開いて“ワゴン”のカテゴリーをクリックしても、ラインナップされているのは「カローラ・ツーリング」と「カローラ・フィールダー」の2モデルだけ。しかもフィールダーは、5ナンバーということで根強い需要があるために従来型の生産を引っ張っているだけだから、世界の大トヨタをしても実質的にステーションワゴンは1モデルだけしか存在していないことになる。 けれどもBMWは5シリーズのセダンの発表から約半年で、ステーションワゴンのツーリングも発表した。 日本に入ってくるのは、今回試乗した2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボ+マイルドハイブリッドシステムの523dと、2種類のBEV(バッテリー式EV)、そして4.4リッターV型8気筒ガソリンツインターボエンジンとプラグインハイブリッドを組み合わせたM5ツーリングの4モデル。 BMWにはBEV専用モデルも存在するけれど、エンジン車とBEVを同じプラットフォームで開発するのが基本路線。この5シリーズも、エンジン車とBEVは共通の基本骨格で構成されている。 実は、このディーゼルのツーリングに試乗する数日前に、BEVのi5 M60ツーリングに試乗していて、その完成度の高さに驚いたばかりだった。i5への感動が身体のなかに残っている状態で、直4ディーゼルターボを始動する。すると……。
ディーゼルターボのフィーリングは上質
BMW523dは、思っていたよりガサついた音でアイドリングを開始した。「おや?」と、思って確認すると助手席側の窓が開いていて、窓を閉めるとガサついたアイドル音がシャットアウトされた。この現象からわかるのは、遮音対策がしっかりなされているということ。 走行中も窓の開け閉めをしながら確認すると、開いた窓から入ってくる生のエンジン音はわりと野卑だけれど、窓を閉めると耳に心地良い音だけが車内に響くようにチューニングされていることがわかる。 このディーゼルエンジンは、もともと1500rpmという低回転域から400Nmもの太いトルクを発生するうえに、マイルドハイブリッドシステムのモーターのアシストもあって、発進加速から力強く、滑らかに加速する。 昔は、回転フィールがスムーズなエンジンに対して、「モーターのように滑らか」という表現を使ったけれど、現代のエンジン車はホントにモーターと比べられてしまう。でも、i5と比べても遜色がないくらい、ディーゼルターボのフィーリングは上質だ。 重厚な乗り心地もi5と共通で、高速道路では3m近い長いホイールベースの恩恵で、動きが落ち着いている。ちなみに試乗車はオプションの可変ダンピングシステムを備えていて、タウンスピードでのしっとり感、高速クルーズでのフラット感に貢献していると思われる。 面白いのは、これだけのロングホイールベースで全長も5mを超えているのに、都内でもそれほど取り回しに苦労しなかったことで、これは後輪操舵のおかげだ。ワインディングロードで「My Modes」と、呼ぶようになったドライブモードを「Sport」にセットすると、ハイテク装備が足まわりやステアリングホイールの手応え、それにエンジンのレスポンスをグッと引き締めて、車体がひとまわりほどコンパクトになったように錯覚する。 操舵やアクセルペダル、ブレーキペダルへの入力に対する打ち返しがぴたっと正確で、原動機がなにであろうと、BMWはBMWだと改めて感心する。もし5シリーズの購入を検討しているとしたら、エンジン車とBEV、どちらにしようか真剣に悩むだろう。 重量物のバッテリーを床下に積むぶん、i5のほう少乗り心地のしっとり感がマシマシだった気もするけれど、現状の充電インフラを考えると「まだディーゼルかな……」と、心が揺れる。