視力は0.01「人を明るくさせたい」天草のスナックで出会った笑顔
熊本県天草市のスナックで働く、生まれつきの視力が0.01の女性がいます。彼女の目に、この世界は、ぼんやりとしか見えていません。それでも、前向きに生きる姿は、周囲を明るくする存在です。
生まれつきの弱視… 支えてくれた家族
天草市で暮らす山田由紀さん。視神経萎縮という病気で、視野はあるものの、視力は0.01ほど。スマートフォンの画面も、拡大して顔を近づけてなければ見えません。 視神経委縮は、遺伝して発症する場合や、緑内障の末期症状として後天的に発症する場合もありますが、由紀さんは「生まれつきの弱視で父の遺伝」と話します。
母・一子さんが異変に気がついたのは、由紀さんが幼少期の頃でした。近くにいる祖母のことがわからないことがあり「おかしい」とは思っていたものの、「この子の将来どうなるのか」とショックだったといいます。 いじめを受けたり、辛いことも多かったといいますが、同じ病気を抱えた父親の憲男さんが、連れ出して話を聞いてくれたり、支えになってくれました。
由紀さんへの病気の遺伝がわかった時には「ごめんなぁ」とつぶやいたという憲男さん。2年前、脳梗塞で帰らぬ人となりました。由紀さんは、亡くなった憲男さんの枕元から離れず、「ありがとう」と声をかけ続けました。
笑顔のきっかけくれた親友
辛い経験を乗り越えてきた由紀さん。笑顔のきっかけをくれた大切な人がいます。アイドルグループが好きだった縁で知り合った親友です。 由紀さんから見ると、彼女は“スーパーポジティブ”。メールや電話、年に数回会う中で、考え方が変わりました。例えば、首都圏で会う際も、単に心配して空港に迎えに来てくれるのではなく、「どこまで来られる?」と、徐々に由紀さんができることを増やしてくれたおかげで、外に出ることが楽しい思えるように。彼女が「成長させてくれた」と感じています。
その親友も、今年2月にがんで亡くなりました。 由紀さんは「以前の自分だったら立ち直れないし、もしかしたら死んでたかもしれないけど、今度は、私が人を前向きにさせられる人になりたい」と語ります。