=LOVE、『ラストノートしか知らない』で通算5作目の首位獲得 切なさを引き立たせる表現力
参照:https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2023-12-11/ 2023年12月11日付(12月5日発表)のオリコン週間シングルランキングでは、=LOVEの『ラストノートしか知らない』が初週約20.7万枚(推定)を売り上げて、1位を獲得。グループとして通算5作目のシングル1位を達成するとともに、前作『ナツマトペ』の約18万枚を上回り、自己最高初週売上を記録した。 【ライブ写真】アリーナ公演も成功させた=LOVE =LOVEは、2017年に代々木アニメーション学院発の新たな声優アイドルとしてデビューした10人組女性グループ。指原莉乃がプロデュースを務め、メンバーはオーディションにより決定した。本作『ラストノートしか知らない』は彼女たちの通算15枚目のシングル。最年少メンバーの齋藤樹愛羅がセンターに抜擢され、これまでピンクだったヘアカラーを金髪にチェンジし、堂々たるパフォーマンスを見せている。表題曲はというとピアノを含むストリングスのアレンジが全編にわたって施されたラブソング。つけて数時間経った後に感じられる香水の香り(ラストノート)をテーマに、報われない恋に落ちてしまった主人公の姿が繊細に綴られている。齋藤のソロから始まり、メンバーそれぞれが1フレーズごとに歌い継いでいくスタイルで進行するが、歌唱から感じられるのはそれぞれの楽曲への理解度の高さ。狂おしいほどの胸の高鳴りはもちろん、それとは裏腹の思い通りにならない状況への諦めや不満、かと思えば突然一歩引いて自分の行動を愚かに感じたりもする複雑な心境を、きちんと声にのせて表現しているのが伝わってくる。サビでは掛け合いやハモリを取り入れながらエモーショナルに盛り上げ、間奏へと余韻を持たせる構成も秀逸。楽曲の持ち味でもある切なさが、より鮮やかに引き立つ。
小林明子「恋におちて」も彷彿とさせる楽曲に
しかしそうは言っても歌詞を見ると〈他にも大事な人がいるの?〉〈抱き締められ/ダメって わかってる〉〈終わりに向かって灰のように落ちる/恋でもいい〉など描かれているのはなかなかヘビーな状況。筆者などは小林明子の「恋におちて-Fall in Love-」を思い出してしまったほどだが、いわゆる不倫ソングや演歌のような切実さや湿っぽさは不思議と見当たらず、むしろ純真さや一生懸命さが強調されていると感じた。それはやはり歌っているのがアイドルグループで、れっきとしたアイドルソングだからだろう。しかも=LOVEは単なるアイドルではなく、声優という「演じる」ことを掲げて集められたメンバーというのも理由の一つだろう。前述した表現への精度の高さは、ここにも由来するものだと思う。楽曲を作品として演じきる、ある意味女優魂があったからこそ「ラストノートしか知らない」には=LOVEらしい個性が立ち上がったように思える。また今回、カップリングはタイプ別に「『ドライブ デート 都内』」「狂想カタストロフィ」「どこが好きか言って」の3曲が収められているが、「『ドライブ デート 都内』」以外の2曲は、表題曲同様、ドロドロとした情念めいたテーマを歌っているので、聴き比べるのも一興だ。 本作のヒットを受けて齋藤は「初めてのセンター表題曲で不安もたくさんありましたが、こうやってみなさんにたくさん手に取っていただけてとっても嬉しいですし、少しほっとした気持ちもあります」とコメント(※1)。来年2月から4月にかけて行われるアリーナツアー2024『Tell me what's more than "LOVE"』を前に弾みがついたようだ。来るべき新年に向け、さらなる飛躍を目指す=LOVEから目が離せない。 ※1:https://www.oricon.co.jp/news/2305229/full/
渡部あきこ