茨城の中3自殺めぐる“担任処分”2審も取り消し命じる判決 県調査委が“根拠”とした「不適切対応」1審に続き否定
「妻の学校復帰叶えば」
会見に出席した担任教諭の夫は、一連の裁判や茨城県の対応について、次のように話した。 「私も以前は茨城県内の公立高校で教頭をしていましたが、妻の事案を経て行政に絶望し、現在は早期退職しています。 妻はこれまで、長年誹謗中傷を受け続けてきましたが、今回の判決で、名誉はだいぶ回復するのではないでしょうか。 ただ、懲戒処分後、妻は通常の勤務地ではない施設で、5年にわたる、極めて長期間の研修を受けさせられていますが、今回の判決で学校復帰が叶えばと思っています。 また、これまでの裁判で内容が否定されたにもかかわらず、調査報告書がいまだに公開され続けています。 こうした研修や報告書の公開が続くのであれば、今後損害賠償を請求する可能性は否定できません」 続けて、「地裁に引き続き、高裁でもこちらの主張が認められたことに安堵(あんど)しています。県や市は判決を真摯(しんし)に受け止めてほしい」とする、担任教諭本人のコメントを代読した。
判決内容「全国の教諭にとって重要」
この日の会見には、控訴審で意見書を提出した教育学者の小野田正利大阪大学名誉教授も出席。調査報告書の問題点と判決について、次のように説明した。 「私は県の調査報告書が出されたときから、報告書は推論に推論を重ねたもので、むちゃな内容だと思っていました。そして、たまたま代理人の先生とつながりができたことから、意見書を書くこととなりました。 意見書の中でも触れましたが、報告書の内容は、担任教師の指導行為を1つ1つ丹念に検討するものではありませんでした。 『いじめがあったのか』と、『指導に問題があったのか』という本来は別個であるはずの問題を混同しており、生徒の自殺という重大事態の責任を、担任教諭にすべて押し付けるための文書だったのではとすら感じています。 また、今回の判決は全国の教諭にとって、非常に重要なものであったと思います。 もし、高裁で判決が逆転するようなことがあれば、自殺者が1人でも出てしまえば、普通に指導を行っていたとしても、担任教諭は停職以上の処分を受ける、という前例を作ってしまうことになりかねなかったからです」
県側が上告でも「支え続けていきたい」
代理人の有川保弁護士は県側が上告する可能性について「ありえるのではないか」と見解を示した。 「今回の事案では、担任教諭以外にも何人かが減給などの処分を受けている。その中でメインとなった担任教諭の処分が取り消しとなれば、県にとって都合は悪くなる」(有川弁護士) また、担当教諭の夫は「妻は今までよく耐えてきました。今後、仮に県が上告したとしても支え続けていきたい」と述べた。
弁護士JP編集部