自然な文章でプレイスリスト作成をうながせる、Spotifyの新機能
100%正確な答えを要求するよりも、正解のない創造的な使い方をする方が、現時点のAIの使い方としては向いている? 【もっと写真を見る】
Spotifyは4月7日、AIによるプレイリスト機能(以下、AIプレイリスト機能)を導入すると発表した。Premiumプランに契約しているユーザーが対象で、現在はベータ版という扱いだ。イギリスとオーストラリアのユーザーから順次提供していくという。Android/iOS両方のアプリで提供する。 自由な文章を用い、気分や状況に合った音楽をセレクト AIプレイリスト機能は、生成AIの「ChatGPT」のように、指示文(プロンプト)を入力し、プレイリストを作成する機能だ。ジャンル名などを具体的に指定するのではなく、かなり自由で感性に沿った指示ができるのが特徴である。 具体的には以下のような形式だ: relaxing music to tide me over during allergy season (アレルギーの季節を乗り切るためのリラックスできる音楽) a playlist that makes me feel like the main character (主人公になった気分になれるプレイリスト) sad music for painting dying flowers (枯れゆく花を描くための悲しい音楽) tracks for horse riding into the sunset (夕日に向かって馬に乗るための曲) 指示する際は、ジャンル、ムード、アーティスト、年代などを組み合わせるのがいいが、他にも場所、動物、アクティビティ、映画のキャラクター、色、絵文字なども使用できる。ただし、時事問題や特定のブランドなど、音楽に関連しないプロンプトの結果は反映されない。特定の人を不快にさせるようなプロンプトへの対策もしているそうだ。 Spotifyでは、AIと組み合わせた強力なパーソナライゼーション技術を通じて、プレイリスト作成の初心者から上級者まで幅広い層が自分だけの音楽ミックスを作れるとしている。 イマジネーションあふれる指示方法、ただ曖昧だからいいという面も プレイリストの具体的な作成方法を見ていこう。 まずアプリの右上にある「+」ボタンをタップして「AI Playlist」を選択する。そうすると、プリセットされたプロンプトを選択したり、自分でプロンプトを入力したりできる。プロンプトを送ると、多少の待ち時間があって、完成したプレイリストが提示される。このプレイリストは手動での編集(曲の取捨選択)も可能だが、「もっとポップに」とか「アップビートを抑えて」など、指示内容をブラッシュアップしていくことで、自分に合ったものに変えていくこともできる。 使い方の動画を見ると、「an indie folk playlist to give my brain a big warm hug」(私の脳を暖かくハグしてくれるインディー・フォークのプレイリスト)といったフレーズではなく、文頭に「Make me」(作ってください)といった言葉を付け、「Make me an indie folk」といったAIに話しかけるような自然な体裁の文章になっている。詳しくは分からないが、自然言語を理解できるAIエンジンが搭載されているようだ。 最初にあげた例などをみても分かるように、創造的で自由な文章を入力できるのが面白い。とはいえ、生成AIには誤った答えを返す幻覚問題がある。100%正確な答えを要求するよりも、正解のない創造的な使い方をする方が、現時点のAIの使い方としては向いているとも考えられる。 Spotifyは、今後数ヵ月をかけて、機能の改良を続けていく意向だ。日本語のプロンプトが使用できるようになるかは不明だが、期待できる新機能だと言えるだろう。また、競合となる「Apple Music」などのサービスが同様の機能を出してくるのかどうかも注目したいところだ。 文● 佐々木喜洋 編集●ASCII