「有事の金」って、いまでも健在なの?
為替が金の価格に大きな影響を与える
逆に、世界景気がよいときは金も原油も需要が増えて価格は上昇します。つまり「同じ方向に動くことも逆に動くこともある」のです。ただ、同じ方向に動くときも逆方向に動くことも数カ月は続くことが多いようです。一年間続くことははほとんどありませんが。 為替は金価格に大きな影響を与えます。国際商品としての金は世界中「ドル」で取引されています。そこでドル安になれば産出国の採金コストが上昇するので金は上がり、ドル高になれば下がります。ここで問題なのはドル高・ドル安は円に対してではなく、ユーロとの関係で動いていることです。というのは為替取引で最も多いのがドルとユーロ間の取引だからです。そこで世界の金相場を見るときはドル・ユーロ相場を見る必要があります。 ただ、日本市場で取引されている金は違います。国際商品としての金はドルで取引していますが、日本市場では円で取引されているからです。そこで、円高になれば金は下がり、円安になれば上がります。 「海外相場が上がったのに国内相場が下がった」ことが時々起こりますが、それは「円高の影響が海外の金高より大きく影響した」からです。
いま買うなら「金」それとも「プラチナ」?
投機としてではなく投資として買うのなら、いまはプラチナがいいかもしれません。生産コストは金よりもプラチナの方がはるかに高いのに、フォルクスワーゲンのディーゼル排ガス不正問題で車の浄化装置向けの需要が減るとみて、価格は金を下回っているからです。このような状態が続けば、いずれプラチナの生産が減って、需給が締まり、価格が上がるでしょう。16年1月の月中平均価格はプラチナが3,335円(前年同月4,799円)、金が4,205円(同4,803円)<田中貴金属 税抜参考小売価格(円/グラム)>。1年先か2年先か分かりませんが。 なお、「財産三分法」という言葉があります。「財産は現金、株、不動産に三分割するとよい」という意味ですが、最近はそれに金を加え「財産四分法」ともいわれてます。金は利息を生みません。それが大きなデメリットですが、インフレのときにはほかの物価と同じように上がり、恐慌のときは財産を守ってくれます。多くは持つ必要はありませんが、いくらかは持っていた方がよいかもしれません。 (市場経済研究所・主幹 岡本匡房<おかもと・まさふさ>)