『源氏物語』や平安時代を身近にしてくれた吉高由里子さん。ありがとう。そしてお疲れ様の記【光る君へ 満喫リポート】吉高さんお疲れ様でした編
佑くんは自然に聞ける人
I:柄本さんと吉高さんは、演技についていろいろ議論を交わしていたことを明かしてくれました。 <第5回での廃邸でのシーン、道長とまひろふたりの、1カットの長回しは思い出深いです。お互いのダンスじゃないけど、どう動くかというのももちろんあるし、感情の押し引きもあるし、このセリフでこういう思いになるかな、などということを話し合いながら演じました。母を殺したのが道長の兄ということがわかってしまったシーンです。第10回でも、逢瀬でふたりだけのシーンはすごく長かったですね。ぐったりするくらいのぶつかり合いでした。あの時も話し合ったのが印象に残っています。自分でも演じるシーンについてはもちろん考えるけど、佑くんは自然に聞ける方だと思いました。佑くんはどう思っているんだろう、ということを聞きたくなる俳優さんなんですよね。佑くんじゃないとできない道長だったなと改めて思いますし、佑くんが道長で良かったと本当に思います。情けない三郎も、恐ろしい道長も。表情がころころと変わって、誰しも表に出しているものと内に秘めているものがあるけど、そういう生々しさを表現できる俳優さんを、1年半、近くで見ていられたことは贅沢だったと思います。> A:なぜ、紫式部は『源氏物語』を執筆するようになったのか。永遠の謎なわけですが、『光る君へ』では、議論のたたき台を改めて提供してもらったような気がしています。撮影自体は10月末にクランクアップしていましたが、その時の様子についても吉高さんが語ってくれています。 <ラストカットに入る時に、セット周辺で大人数が待機してくれていたんですよね。ラストは道長とふたりのシーンで、物語を読んでいるシーンだったんです。普通はOKがかかった後、「チェックします」みたいになるんだけど、今回は、みんなでわっと集まってきて、みんなで第1回から第48回までの思い出深い場面のモンタージュ映像を見て。その後の挨拶の時に、花束を持って来てくれたチーフ演出の中島由貴監督がすごく号泣していて、もらい泣きしちゃいました。凛として終わりたかったのに、みんなでシクシクしながら、良かったねって、写真撮ったりして……そんなクランクアップでした。クランクアップから2日後にまた用事があってNHKに来たんだけど、スタジオを覗いたらもぬけの殻だったんですよ。スタジオ入口前の前室にも、撮影中はいっぱい写真やら視聴者の皆さんからの応援の手紙やらが貼ってあったんだけど、それすら跡形もなくて。私達の思い出が一瞬にして消されてしまったみたいで寂しかったなぁ。もののあわれ、ですね(笑)。> I:吉高さんは大河ドラマのセットの豪華さについても言及してくれました。 <最初にびっくりしたのは、セットの中に池を作っちゃうんだぁ、ということ。まひろの実家の為時邸に池とか井戸とかあって、今までのスタジオだと考えられないことでしたね。曲水の宴や廃邸も。同じ水面の表現であっても、全然違うものを作るのがすごいですよ。NHKすごいと思いました。小道具としては、琵琶はずっとまひろとともにあったんですよね。まひろにとって琵琶はお母さんのような存在ということになっているから。側にお母さんを感じているんです。まひろが弾く琵琶は、心のうちにある思いを、言葉にできないものを鳴らしていたんだと思います。お母さーん!という気持ち。小道具でもうひとつ印象に残っているのは、道長からプレゼントされた扇ですね。有職彩色絵師の林美木子さんの作品だそうです。皇室で使うものも作っているような作家さんの手による檜扇で、セットの中で何よりも、誰よりも大切に扱われていました。普段はあまり手にすることができないような品を自分の手で持てるのは、大河ドラマでないとできないことで、印象深かったです。> A:全ての撮影を終え、1年半を完走した思いについても触れてくれました。 <クランクインの時、いよいよ大河ドラマをやるんだと鳥肌が立ちました。スタッフの数もセットの規模も違うんですよね。ゆっくりだけど重たいものが後ろから迫ってきているような感覚でした。スタッフの皆さんの結束力やスピード感は素敵だと思いました。撮影中は、いい時もあれば苦しい時もありました。現場の空気も起伏がありますし。休みなくずっと撮影が続く時なんかは、現場に来るだけでもしんどい時もあるけど、盛り上げようと、よしもう少しだ!、とスタッフの方々がやってくださっているのを見て、私も頑張らなきゃって思いました。撮影が終わって、開放感はありますね。でも、最終回までまだあるから、ロスというのはまだないんですよ。この経験は一生に一度なんだから、気が抜けないですね。> I:さあ、いよいよ明日12月15日日曜日、『光る君へ』が最終回を迎えます。思いがぎっしり詰まった吉高さんの言葉をかみしめながら、まひろと道長、仲間たちを最後まで見届けたいと思います。 ●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。 ●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。 構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり
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