富士山「入山規制はまだ甘かった」ことが明白に 2024年は一定の効果も規制強化の方向へ
■2024年はピーク時の6割に この結果をどう捉えたらいいのか。富士山登山者数のこれまでの推移を見てみると、2010年の32万0975人が最多で、コロナ前の2019年は23万5646人だった。コロナ禍中の2021年は7万8548人まで落ち込んだが、以降は16万0145人(2022年)、22万1322人(2023年)、19万9604人(2024年)となっている。 全体の登山者数を見るとピークだった2010年の32万人と比べ、2024年は約6割の水準にまで減少している。これだけだと、オーバーツーリズムはずいぶん解消されてきたという感じもしなくはない。
しかし、徹底した入山規制を行っている外国の山と比べると、印象はまったく異なってくる。たとえば台湾の最高峰・玉山(ぎょくさん・現地読みユイシャン=3952メートル)は、日帰り登山は1日60人、2つある山小屋の定員は140人で、入山者は合計200人程度に規制されている。 このうち排雲山荘の宿泊人数は116人で、外国人枠は24人。外国人枠の予約は4カ月前から35日前で、35日前には枠が確定する。これに漏れると、台湾人を含めた申込者全体で枠を争うことになる。
ひるがえって富士山は今シーズンの1日当たり最多数は9月7日の5977人だ。シーズン中は連日2000~4000人は登っているから、玉山の10倍、20倍ということになる。9月7日の5977人(4ルート全体)は、玉山入山者の約30倍にあたる高水準だ。 1つのルートに登山者が2000人以上殺到すれば、混雑による渋滞、落石や転倒の危険性が高まる。コースの踏み外しによる登山道や生態系の毀損、さらにはバイオ式をはじめとする環境配慮型のトイレの処理能力の限界、ごみの散乱などさまざまな事象が出てくる可能性が常にある。
富士山の場合、今シーズンの規制は山梨県側だけだったので、事前登録だけで規制のない静岡県側に多くの外国人が流れたという情報もある。規制は山梨・静岡両県が一緒になって行わなければ意味がないし、1日4000人という入山規制はまだ緩いとの指摘もある。 ■山梨県、静岡県、両知事の今後の方針は? こうした疑問に対し山梨県、静岡県両知事の対応が興味深い。 山梨県の長崎幸太郎知事は「本規制が多くの方々から、ご理解とご支持をいただいている」との認識を示したうえで、「静岡県との規制のハーモナイゼーションも大きな課題の1つであろうと認識しております」と課題を指摘した。