<劇場版モノノ怪>中村健治監督×神谷浩史対談(2) “新生”薬売りが生まれた瞬間 収録秘話
神谷さん そんな中で、おおよその方向性を持って提案しているわけですよね。中村監督に「OKです」と言っていただけたらそれが正解なんだなと僕は納得できるんですけど、そうでないと、この映像ならどうとでも成立させられる気がするんですよ。トータルの印象として、大奥という概念みたいなものをワーッとぶつけられた感じがして。その中で、自分の立ち位置は決められるんですけど、正解の音がどれだか分からないという。だから、演出次第によって変化できますよ、という幅を持たせて収録に臨んだつもりでした。あまりにも「これしかできません」だと、このフィルムには失礼な気がしたんです。それでやみくもにやってみて、監督に判断していただくという、まな板の上の鯉(こい)状態で、「料理してください、お願いします」という。
中村監督 そんなことないですけどね(笑い)。本当に収録はスムーズだったので。僕自身はすごく緊張していましたけど。本番収録の前に、特報で何回か神谷さんにアフレコしていただいて、仕上がっていく感じがあったんですよ。変わっていないけど、変わっているみたいな、言語化できない“動き”があるなと感じていて。「じゃあ、当日どうなるんだろう?」と思って、収録で神谷さんの声を聞いて、僕はOKを出しただけです。意外なお芝居もありましたが、むしろ「なるほど!」と思いました。僕らも声優の方に決めてもらうところが多いんですよね。神谷さんと似た話になりますが、僕たちも幅を持たせていて「どこでも着地できますよ」と。
◇収録当日の朝 中村監督が急いで収録を始めた理由
--収録当日、印象的だったことは?
中村監督 朝、神谷さんにあいさつした時に、「なんかもうきてんな」って感じがしたんですよ。神谷さんは、何かそういう空気をぶわーっと出す方ではないんですけど、リラックスしているようでいて、「今できているから、すっとやりたいな」という感じが神谷さんから伝わってきて。これもう、さっと始めたほうがいいと思って、すぐに僕もブースに戻って「スタート!」みたいな(笑い)。神谷さんが「いける」というコンディションのうちに終わらせたい、みたいな。そういう感じがしました。