日本初となる顔認証による鉄道乗車システムが「ユーカリが丘線」で実装に
コミュニティバスでも導入し乗車をシームレス化
2024年6月7日、不動産事業を本業として千葉県佐倉市で鉄道「山万ユーカリが丘線」を運行する山万株式会社は、乗車システムに顔認証を採用した改札機の本格導入を発表。同月15日から運用が開始された。 【写真】路線図と顔認証システムの改札口などを見る 交通系のスマート決済方法といえばSuicaやPASMOに代表される、近距離無線通信NFCによる非接触型決済のICカードが代表的だが、最近では半導体不足を主な要因として一時期販売を停止するなど一部で混乱が生じ、モバイル端末での入場を促進。また乗車券(きっぷ)は磁気式からQRコード式に置き換わりだすなど、少しずつ変革が進んでいる。 そうした状況下で新たな乗車システムが登場し、2024年6月15日から本格運用が始まった。 導入したのは、山万株式会社が千葉県佐倉市で運行している「山万ユーカリが丘線」。京成本線のユーカリが丘駅と接続し、北方向へ伸びてニュータウン「ユーカリが丘地区」の中をテニスラケットのような形状で1周(約4.1km)する新交通システムの鉄道路線だ。 従来、乗車にあたっては、乗車券の購入や定期券の提示など、ひと手間がかかっていたが、コロナ渦にある2021年に券売機や現金通貨に触れないシステムとして、「ユーカリPASS(顔認証乗車システム)」の実証実験が同社運行の山万コミュニティバス(こあらバス)とユーカリが丘線で行われていた。 この「ユーカリPASS」は顔認証技術をパナソニック コネクトが、決済・チケット管理のシステムをジョルダンが提供することで、非接触・非対面での本人確認とチケット確認そして乗車管理をシームレスに実現できるようになっている。こうした2年近くにわたる実証実験を経て、今回晴れて本格導入となったわけだ。
乗車のシームレス化と地域店舗の活性化も狙い
事前に専用サイトで顔認証とクレジットカード情報を登録しておけば、顔認証専用の改札機に装着されたタブレットに顔を読み込ませ入場できる仕組みだ。もちろん降車時も同様に顔認証で改札を通過できる。 現在、顔認証のユーカリPASSを利用できるのは普通乗車券だけで、定期券や回数券、シニアパスなどは従来どおりの対応、そして磁気式のきっぷ販売は継続、さらにQRコードによるQR乗車券の販売も始まるなど、乗車手段は多様化している。 しかしこの状況も移行期にあたる今だけで、山万は今後、普通乗車券はQR乗車券に、定期券は顔認証に移行していくとしている。また顔認証システムは鉄道やバスへの乗車だけでなく、将来的には地域店舗における決済システムとしての導入やポイントの付与など、多面的な利用の検討を進めていくという。 その手始めともいえるスタンプラリーイベントが同年6月15日~7月31日の期間限定で開催されている。顔認証で「山万コミュニティバス」もしくは「山万ユーカリが丘線」を利用したのち、2時間以内に対象店舗で顔認証チェックインを行うことでスタンプを獲得、5つを集めることでサービス券を配布するというものだ。 ユーカリが丘地区での公共交通機関と地域店舗の連携による経済活性化策は、どのような成果を上げられるか、これからも注目していきたい。