石原さとみさん「悩みや困難を乗り越えた先の充実感が、最大の幸せ」
これまでと大きく異なる作品に挑戦! 俳優・石原さとみさんインタビュー
俳優として、女性の憧れの存在として、いつも先頭を走っていた石原さとみさんが、「自分がつまらない」と感じ始めたのは、30代に入ったころ。悩むだけでなく、とことん考え、文章にして、自ら行動を起こしたことから、事態は開けてきた。「あのとき、行動を起こした自分をほめたい」と言う石原さんが、次のステップに進むまでの過程を振り返ります。 【撮り下ろし写真6枚をすべて見る】赤いドレスを華麗にまとう石原さん!「正気を失った母親」を演じた場面写真も ◆最初からずっとスランプ状態でした 「30代に入ったころの私は、どこかで自分に飽きてしまったようでした。自信がなくて、自分がつまらなく思えて。そう感じているということは、きっと世間も同じように感じているだろうと。そんなときに出合ったのが、吉田(※正式にはつちかんむり)恵輔監督の映画でした」 吉田監督作品といえば、ドキュメンタリーさながらの生々しい人間描写で知られ、これまで石原さんが出演してきたどの作品とも大きく異なる。 「私にオファーがあまりこないタイプの作品ばかり。だからこそ、吉田監督になら“自分を変えてもらえる”という期待がありました。どんな役でもいいから、監督の作品に出たいと直談判し、それから6年後、ようやく実現したのが映画『ミッシング』です」 本作で石原さんが演じたのは、娘の失踪を機に自分の心を失いながらも希望を求め続けるという難しい役だった。 「脚本をいただいたのが3年前。その後撮影に入る段階で、子供をもって環境が変わってからもう一度読み返してみたら、演じる役の怖さ、狂気、悲しさ、残酷さ、どれも痛いほどわかりました。 わかりすぎて、怖すぎて、どう表現したらいいかわからなくて、最初からずっとスランプ状態。せめてもの役づくりとして、髪の毛もスキンケアもかまわず、あえてボディソープで髪を洗ったり、ジム通いをやめたり。疲弊した母親役になるためではあったけど、私自身の不安の表れだったような気もします」 ◆自問自答を繰り返し、考えを文章化する 果たして、スクリーンの中の石原さんは、時に乱暴な言葉を使い、乾いた唇や毛先、疲れた肌、ゆるんだ頬や体のラインをまとい、全身で役になりきった。そこには、これまで見たことのない石原さんがいた。悩み続けた演技のほうはというと、本物の涙を何度も流し、ときに正気を失い、「役を生きる」感覚を完全につかんだ。 「とはいっても、今でも自信のなさは、相変わらずです。ただ、これまでと違うのは、私にはこの作品を通して学んだ〝経験〟という宝物があること。苦しんだぶん、次に生かさないと、せっかくの宝物がほこりを被ってしまいます。と同時に、どんなタイミングで宝箱を開けるのか、その先に何が待っているのか、また別の怖さを感じています」 「これからもきっと、悩んだり行き詰まったりすることはあるでしょう。そんなときは、ずっとやってきたように、自問自答を繰り返すだろうと思います。漠然と考えるのではなく、どうしてなのか、どうなりたいのか、何を変えたいのか…。何度も何度も問い直して、考えたことを全部書き出して。 やるべきことが見えてきたら、それを目標にすえて行動に移すだけ。この、〝文章化すること〟が大事で、私の場合は手帳やノートに手書きするのが習慣です。今のところ、つくった目標は実現しているけれど、さて、この先は…。今、文章化しているのは45歳までの自分のプランです」 「プライベートの計画から、挑みたい作品、新たに始めたいことまで。日々忙しくて流されてしまいがちだけれど、自問自答する方法は、忙しいみなさんにこそ、おすすめします。この時間をどれだけ取れるかが、30代を充実させるカギになるのではないでしょうか」 ◆目指すは人を励ます余裕を持つこと デビュー当時から、自分を見つめて目標の文章化を続けてきた。20年前に手帳に書いた「影響力のある人になる」は、今でも石原さんの指針になっている。 「私が考える『影響力』は、観た人に何かを感じてもらうこと、少しでも励みに思ってもらうこと。それには、俳優業は最適だと思います。ドラマを観て、気分がアガるのでもいいし、今回の『ミッシング』でいえば、これまでとまったく違う私の一面にハッとしてもらえたら、うれしい。 45歳までの計画を実践していって、目指すはさらに人を励ます〝余裕〟を持つこと。それを実現するときに必要なのは、仲間の力です。文章化したものはマネージャーと共有し、よく話したりもします。仕事でもプライベートでも、悩んだら仲間にすぐ相談するし、ひとりで抱え込むことはありません」 「そうやって、悩みや困難を乗り越えた先の充実感が、私の最大の幸せです。この幸せのために、自ら困難に飛び込んでいるといってもいいくらい。映画『ミッシング』で人生最大の困難を乗り越えた今、私はとてつもなく幸せです」