ちな&角野隼斗インタビュー。アニメーション映画『ファーストライン』で“同世代”コラボ
「同世代から受ける刺激は大きい」
その想いがピークに達するのが、本作のクライマックスで描かれるあるワンシーンだ。そこでは鳴り響いていた音楽が消え、選び抜かれた線だけでキャラクターの感情が溢れ出す一瞬が描かれる。 角野 クラシックでも音が“鳴ってない”時間ってすごく重要なんです。演奏される場所がコンサートホールだと無音になった時には何もノイズがない状態になる。それをどう聞かせるか。そこは映画音楽にも通ずるものがあるのかもしれないです。あの瞬間は登場人物のセリフとか、鼻をすする音を際立たせるためにも無音にしたいと最初から考えていました。 ちな監督 角野さんから音楽のデモをいただいた段階から、あのシーンは無音になっていたので、そのことは意識して作画をしました、それにすべての映像を完成させてダビングをする段階でも音響監督の方から『このシーンはやっぱり無音ですよね』って言われて、それまで薄く入っていた環境音もすべてカットして無音にして……みんなの心が一致したなと(笑) 『ファーストライン』は丁寧に選び抜かれた線で描かれるアニメーションと音楽がピッタリと寄り添い、省略や無音も“豊かな表現”としてスクリーンに現れる。異なるジャンルで活動してきた同い年のふたりの対等な“コラボレーション”が生み出した成果と言えるだろう。 ちな監督 僕は画を描いたり、映像をつくる仕事で、音楽家さんと仕事をすることはありますけど、自分で演奏できるわけでも楽譜を読めるわけでもない。でも、今回は角野さんという同い年で、こんなにすごい音楽をつくれる人がいるんだと思いましたし、その方のつくった音楽を聴きながら画を描いて、それを高めていくことができた。それはとても刺激的でしたし、いろんな年代の方と仕事をしてきましたけど、同世代から受ける刺激って大きいと思いましたね。改めて、自分も頑張ろうと。 角野 自分と違うジャンルで、同世代の方とコラボレーションできることは、ちな監督もおっしゃってますけど刺激的なことだし、僕の知らない世界なので、どういうことを考えて作っているのか話しながら作業できたのもすごく面白かったです。そこで聞いたことを自分のフィールドとリンクさせて、アニメーターの方にとっての”ファーストライン”は、僕たち音楽家にとっては“一音目”だなと。だから、この映画でも“一音目”はすごく考えましたし、この映画の音楽の裏テーマのひとつでもあるんですけど、そんなふうに異ジャンルから受けた刺激を取り込んで、学んで、自分の表現に活かすことができた。非常に貴重な経験ができたと思っています。 撮影:源賀津己 『GEMNIBUS vol.1』 6月28日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷、TOHOシネマズ 梅田にて2週間限定公開 Ⓒ2024 TOHO CO., LTD.