練習に励む、原監督（右）率いる青学大の選手たち

　暑い夏が過ぎ、いよいよ駅伝シーズンが迫ってきた。学生３大駅伝は１０月１４日の出雲駅伝で開幕し、第２戦の全日本大学駅伝は１１月３日に開催。そして、最終戦の箱根駅伝は２５年１月２、３日に行われる。昨季の箱根を総合新記録で圧勝した青学大が、今季も勢力図の中心にいる。国学院大はマラソン日本学生記録保持者の平林清澄（４年）を軸に初の箱根路制覇を狙う。昨季２冠の駒大、昨季箱根３位の城西大、同４位の東洋大、同７位の早大、箱根予選会（１０月１９日）から巻き返しを図る中大も優勝争いに加わる力を持つ。学生ランナーの魂の継走は今季も熱い。 　大学駅伝界には「夏を制する者が箱根を制する」という格言がある。箱根駅伝連覇を目指す青学大は、長野・菅平高原、岐阜・御岳高原、新潟・妙高高原で夏合宿を行い、走り込みを重ねた。「故障者が少なく、チームの雰囲気はすごくいいです」と主将の田中悠登（４年）は胸を張って話す。 　８月中旬、菅平高原で恒例の上り坂タイムトライアル（ＴＴ）を２回敢行した。１８キロを設定ペースで集団で走り、残り３キロを競走。標高１３２２メートルから同１５３５メートルまで高低差２１３メートルを全力で駆け上がる。「心臓が口から飛び出そうになる」と多くの選手が話すほど厳しい２１キロ走。前回の箱根２区で歴代４位（日本人歴代２位）の１時間６分７秒の好記録で区間賞を獲得した黒田朝日（３年）が２回ともトップを取った。原晋監督（５７）は「気象条件やレース展開次第では２区で区間記録（１時間５分４９秒、２１年東京国際大・ヴィンセント）の更新も狙えますよ」と期待する。黒田も「次に目指すところは日本人歴代１位（１時間５分５７秒、２０年東洋大・相沢晃）です」と意欲的に話す。 　前回の箱根３区で、日本人歴代最高タイムで区間賞を獲得した太田蒼生（４年）、同５区で区間新記録（２位）と好走した若林宏樹（４年）ら主力も上り坂ＴＴで昨夏の自身の記録を超えた。箱根では抜群の強さを発揮する太田は「出雲、全日本ではアンカーを走りたい。優勝のゴールテープを切るイメージを持っています。箱根では２、３、４区の任された区間でしっかり仕事をしたい」と頼もしく語った。 　今季最大の“新戦力”が４年の鶴川正也だ。これまで学生３大駅伝は３年時の出雲（６区区間８位）だけだが、今季は絶好調。６月の日本選手権５０００メートルで屋外レースとしては日本人学生歴代最高の１３分１８秒５１で４位入賞を果たした。チーム一のスピードランナーは、上り坂ＴＴでも１回目３位、２回目２位と激走した。「僕は上り坂も速い。下りも速いし、平地はもっと速い。最後の学生駅伝は３つとも区間賞を狙います」と元気いっぱいに話す。 　８月下旬から９月上旬の御岳高原ではクロスカントリーコースを中心に走り込み、９月中旬の妙高高原ではスピード駅伝の出雲を見据えてトラック練習にも注力した。夏合宿の合間には改修された選手寮への引っ越しを済ませた。「さらに強くなれる環境が整いました」と田中主将は明言する。 　出雲路、伊勢路、そして、箱根路へ。青学大は確実に進んでいる。今季のチームテーマは「（箱根駅伝のゴール地点の）大手町で笑おう」。２０２５年１月３日、それを実現するために走り続ける。（竹内　達朗） 　◆駒大 　昨季２冠も本命だった箱根でまさかの２位。２大会ぶりに箱根の頂点を狙う今季は、５月の関東学生陸上競技対校選手権（関東インカレ）２部で入賞者２人と大苦戦。エースで主将の篠原倖太朗（４年）は「駒沢の力になって卒業したい」とチームを鼓舞し、夏合宿では伊藤蒼唯（あおい、３年）、桑田駿介（１年）ら主力を中心に順調に底上げが進んだ。超学生級エースの佐藤圭汰（３年）は今夏、米国合宿でさらに力を蓄えた。 　◆城西大 　昨季は出雲２位（過去最高１８年８位）、全日本５位（同１８年８位）、箱根３位（同１０年＆１２年６位）と３大駅伝全てチーム最高記録を残した。箱根５区で２年連続区間新記録をマークした山本唯翔（ゆいと、現スバル）の穴は大きいが、前回の出雲３区と全日本３区で区間賞のヴィクター・キムタイ（３年）、同全日本４区区間賞の斎藤将也（３年）ら逸材は多い。今季も“自己ベスト更新”を目指していく。 　◆東洋大 　昨季は出雲７位、全日本１４位と苦戦したが、箱根で４位と挽回。今季はさらに上昇カーブを描く。梅崎蓮、石田洸介、小林亮太の４年が充実し、松井海斗、宮崎優らルーキーは勢いがある。昨季の３大駅伝すべて欠場したが、今季復調した石田は「流れを変える走り、流れを加速する走りをしたい」と力強く話す。梅崎は「箱根で総合優勝を狙います」と１４年以来の頂点へ意欲を示した。 　◆早大 　学生３大駅伝通算２０勝を誇るが、３冠を達成した１０年度を最後に優勝からは遠ざかる。主将の伊藤大志（４年）は「４年間で一番いい夏を過ごせた。駅伝で戦えると思います」と手応えを明かす。花田勝彦監督（５３）も「出雲、全日本では３位以内を目指し、『今季の早大は強いぞ』というところを見せて箱根に臨みたい」と意欲的に話す。人気の伝統校がＶ戦線に加われば大学駅伝は盛り上がる。 　◆中大　優勝候補だった前回箱根は体調不良者が続出し、１３位でシード権も逃した。今季はジョギングの量を徹底的に増やし、５月の関東インカレでは主力の溜池一太（３年）が１万メートル４位、岡田開成（１年）は５０００メートル６位など全体の層が厚くなり、藤原正和監督（４３）も「思っていたような強化ができた」と手応え。エースの吉居駿恭（しゅんすけ、３年）も順調な夏を過ごした。