なぜホンダCBR400Fは再注目されたのか? 新車当時53万9000円だった車両は今……
「VTEC」へとつながった「REV」を採用
河西:CBR400Fの前身は81年に登場したCBX400Fで、これも400cc4気筒としてはかなり画期的なモデルで大ヒットしたんです。ただ先に話したように、この頃はメーカー間の開発競争が激化していて、次々とライバル車が登場したため、さすがのCBXもわずか2年でCBRにバトンタッチせざるを得なくなった。 佐藤:CBX400Fはいまめちゃくちゃ高いですよね。中古車サイトを見たら、¥7,000,000~¥8,000,000するのもあって驚きました! 河西:ノーマル状態で残っている個体は少ないから、ノーマルできれいな状態だったら、それぐらいするかもしれないですね。CBRは、エンジンがCBXからのキャリーオーバーなんですが、8500rpmを境に2バルブから4バルブに切り替わる可変バルブ機構「REV(Revolution modulated Valve control)」が採用されて、CBXより10psパワーアップした58psを発揮していました。ちなみにこのREVを発展させたのが、ホンダ四輪エンジンでお馴染みの「VTEC」なんです。 佐藤:へえ! VTECの元になったのがこのエンジンなんですね。それはすごい! でも、そのわりにはCBR400Fって、絶版旧車市場であまり存在感がないような気がするんですが。 河西:そうですね。さっき“粗削り”と、言ったけど、むき出しのヘッドライトステーかライト下に取り付けられたオイルクーラーとか、見ようによっては未完成な感じするんです。じっさいこのCBR400Fも登場から2年半ほどで、フルカウルのレーサーレプリカ「CBR400R」にモデルチェンジしてしまうし、CBXほどの人気は得られなかったかなと。
『ホットロード』の春山仕様が注目される
佐藤:バイクブームの中ではあまり目立たなかったCBR400Fですが、意外なことからカリスマ的人気を博すバイクになるんですよね。 カワニシ:そうなんです。80年代に『別冊マーガレット』(集英社)で連載されて、単行本の発行部数700万部という人気作品となった漫画『ホットロード』。そこに登場する不良少年“春山”が乗っていたのがCBR400F。そのホットロードが2014年に実写映画化されたときに劇車としてCBR400Fが使われて、大きな注目を集めたという。 佐藤:映画では主人公の少女、和希役を能年玲奈さん、春山役を三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの登坂広臣さんが演じていました。映画もヒットしましたよね。 カワニシ:劇中では暴走族「Nights」メンバーが乗るホンダ「CB400フォア」、カワサキ「KH400」、スズキ「GT380」、ヤマハ「RZ350」など絶版旧車が大集合でしたが、なかでも春山のCBR400Fは和希とのタンデムシーンなど印象的なシーンで使われて、「BEET」のテールカウルに「モリワキ」フォーサイトの集合管を付けた“春山仕様”という言葉が生まれたぐらい。実は最近の絶版旧車人気に大きな影響を与えた一台と言っても間違いじゃないですね。 佐藤:隠れた名車ですね。あらためて中古車価格を見たら、ノーマルのCBR400Fはすごい価格になっていたので驚きました。 カワニシ:CBR400Fもこの時代の250~400ccクラスと同様、カスタムされたり雑に扱われていたりで、ノーマル状態で残っている個体が少ないんです。CBR400Fは現役時代にあまり人気がなかったので、なおさら。ちなみにこの個体はマフラーまでノーマルのままのほぼオリジナルコンディションで、めったに出てこない希少車です。市場で600万円ほどの値段がついていますよね。 佐藤:知れば知るほど、絶版旧車の世界は深いですね。バイクそのものだけじゃなくて、時代背景やカルチャーも関係してくる。もっと詳しくなって、自分でも手に入れたくなりますね。
【プロフィール】佐藤友祐(さとうゆうすけ)
96年6月11日生まれ、北海道札幌市出身。男女混成ダンス&ヴォーカルグループ「lol(エルオーエル)」所属。「avex audition MAX 2013」でアクター部門グランプリを受賞。lol加入後は、アーティスト活動だけでなく、俳優やモデルとしてもマルチに活躍中。 文・河西啓介 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・堀直樹 ヘア&メイク・山田佳苗 編集・稲垣邦康(GQ) 取材協力・UEMATSU