記録的大雨 与論農業被害8千万円超 最多はインゲンなどの野菜 品質劣化、出荷できず 鹿児島県
鹿児島県与論町は、今月7日からの大雨による農業被害が約8203万円に上ると明らかにした。まだ速報値でさらに膨らむ見込み。農産物別ではインゲンが主の野菜が最多で、冠水により作物が水に浸かり品質が劣化、出荷できない状況となっている。ハウスや牛舎などの建物被害、サトウキビ収穫用のハーベスターなど機械被害も確認された。 町産業課が13日夕までにまとめた。野菜の被害額は約4600万円で、インゲンのほかはニガウリ、サトイモ。記録的な大雨により「島全体が川のような状態」(同課)となった中、ビニールフィルムをトンネル型に被覆しての栽培が多いインゲンは、水や土砂が流入。「一日経過するごとに品質が劣化し、根腐れやインゲン自体も腐敗するようになった」 ハウスで栽培されているオリエンタルユリ、ソリダコ、トルコギキョウといった切り花も同様。冠水がハウス内にも及び、継続しての栽培が困難な廃耕を迫られる施設も出ているという。花き類の被害額は野菜に次いで多い約2142万円で、両産物で全体の8割以上を占める。 基幹作物のサトウキビ被害は新植夏植えのほ場でみられ、冠水による土砂の流出で苗がむき出しになった所も。被害額は約540万円で、単収が低下する見通し。キビ関係ではハーベスター1台が水に浸かった。また、製糖工場で浸水被害が発生。用水路が近くにあるため、あふれ出した水が工場内に及んだもの。電気系統への影響が懸念されており、作動しない場合は12月16日を予定している製糖が開始できない可能性がある。 与論は肉用牛の飼養頭数から畜産が盛んだが、牛舎4棟で水に浸かる被害が出た。生産牛や子牛などは避難により被害はない。深刻なのは飼料作物。自給飼料は、冬場は成長しないことから、刈り取り収穫し梱包(こんぽう)、ラップフィルムで密封し保管するが、作り置きしていた約1500個が雨水で流されたという。自給飼料が使えず、輸入飼料で代替となると価格面から肉用牛農家は痛手となりそう。 このほか冠水や用水路からの濁流などによりハウス5棟が被害(変形、一部崩壊も)。軽トラックや用水ポンプなど機械関係も36件の被害が確認された。 同町では8日夜から9日明け方にかけて、発達した雨雲が連なる線状降水帯が発生する記録的な大雨に見舞われ、10日午後6時までの72時間降水量は666・0㍉を記録、観測史上最多を更新した。