新型コロナウイルスによる肺炎の感染が国内でも拡大している問題で、厚生労働省は28日夜、中国・武漢市への渡航歴がない60代の日本人男性の感染を確認したと発表した。日本人の感染例は初めて。さらに40代男性と40代女性の感染も明らかになり、国内で確認された新型肺炎の感染は計7例となった。厚労省は、日本人男性の感染について、人から人の感染の可能性はあるとし、検査対象を拡大する方針を示した。 【中継録画】新型肺炎、武漢渡航歴ない人の感染確認　厚労省が会見

感染確認された日本人男性、武漢からのツアー客と接触

新型肺炎に感染した患者の症状や今後の対策について説明する厚労省の担当者＝28日午後7時すぎ

　厚生労働省によると、この日本人男性は奈良県在住で、武漢市への渡航歴はない。ただ男性はバスの運転手として、8日から11日（大阪～東京間）と、12日から16日（東京～大阪間）の2回にわたって、武漢からのそれぞれ別のツアー客をバスに乗せていたという。男性は悪寒やせきなどの症状を訴え、17日に奈良県内の医療機関を受診したが、異常がみられなかった。しかしその後、関節痛やせきの症状が悪化し、25日に入院。検査の結果、新型コロナウイルスに感染していることが確認された。 　日本国内で武漢の滞在歴がない人の感染が確認されたのは初めて。日本人としても初めて感染が確認された。厚労省は引き続き、聞き取り調査などを行う。 　また28日には新たに、40代の男性と40代の女性の感染が確認された。2人は武漢市在住の日本への渡航者だが、それぞれ別に来日。40代男性は、発熱や倦怠感があったことから26日に愛知県内の医療機関を受診。肺炎と診断され、現在は入院しているという。 　40代女性は、22日から北海道を観光旅行に訪れたが、26日夜に発熱、せきがあり、27日に道内の医療機関を受診し入院。28日に感染が確認された。熱は残っているものの容態は安定している。

「人から人への感染」明確には確認できていない

　厚労省結核感染症課の日下英司課長は、これまでの感染は（1）武漢から来て肺炎症状がある人、（2）肺炎患者と濃厚接触があった人のような場合を想定していたが、今回の日本人男性は「感染源が特定できていない状態」で、上記のケースに当てはまらないと指摘。原因不明の感染症患者などについて報告する「疑似症サーベイランス」の対象を拡大する方針を示した。どこまで検査対象として広げるかは、専門家と議論して早急に決めたいとした。 　人から人への感染の可能性については「高いだろう」としたものの、「現時点では明確に人から人への感染が持続的に認められている状況ではない。過剰に心配することなく、季節性インフルエンザと同様に咳エチケット、手洗いなどの感染症対策に努めてもらいたい」と呼びかけた。 　感染の拡大を受け、厚労省は28日、加藤勝信厚労相を本部長とする対策推進本部を立ち上げた。水際対策や国内の感染防止に全力を挙げて取り組む。また、一般向けの電話相談窓口を設置し、新型肺炎に関する質問や相談を受け付けている（午前9時から午後9時まで）。