登山中の「隠れ脱水」北アで医師らが注意呼びかけ
すぐ治療受けられず「予防が大切」
登山中の脱水や熱中症は、すぐに治療を受けられないので「何より予防が大切」と大城医師。「山小屋で一泊した朝も体の水分は失われているため十分に補給し、朝のうちにトイレに行く状態にすることが大事です」。午前中に水分不足のまま登山を続けると、午後になって症状が出るおそれがあるといいます。 登山中の水分補給と休憩も「25分歩いたら5分休んで水分補給、といったペースでこまめに」と大城医師。脱水症状は自覚しにくいので、いくつかのサインを覚えておいてお互いにチェックするよう気配りが求められています。 また、女性の場合はトイレの心配から水分を控えていると脱水や熱中症になるおそれがあり、登山前の水分補給などはしっかりと。「女性を含むグループの場合は、リーダーが強制的にでも全員にトイレに行かせるようにし、遠慮なく水分補給できるようにすべきです」。
脱水の予防策と6つのサイン
「かくれ脱水」委員会や大城医師がまとめた「かくれ脱水」のサインは、(1)体がだるい(2)足がつる(3)食欲がない(4)歩くペースが落ちて遅れ始めた(5)いつもより尿が少ない(6)イライラする――の6つです。登山では多少の体調不良かと見過ごすこともありそうですが、丁寧な対応が求められそうです。 脱水の予防策としては、「登山前に500ミリリットルの水を飲む」「最低2リットルの水分を携行する」「30分置きに200~250ミリリットルの水分補給」「コースの水場を事前に確認」「食べ物から糖質をしっかり補給」などを挙げています。 2リットルの水分携行は、2キログラムほどの重量になりますが、大城医師は「行程の前半から中盤にかけてしっかり水分補給水をしていけば、後半で背中の重量を減らすことができます」と話しています。 万一脱水症になった場合は「水分と塩分、糖質が入った経口補水液などを少なくとも1リットル飲んでもらい、涼しい場所で足を高くして安静に」。手足などに水をかけてあおぎ、体温を下げます。30分ほどで回復して自分で歩ける場合は行動を続けてもよいが、回復に時間がかかる場合は必ず誰かが付き添って下山します。 大城医師は「脱水状態で下山すると、ふらついて転倒するおそれもあります。脱水状態になってからの対策を考えるのではなく、脱水状態にならないようにしっかり気配りしてください」と話しています。 この日のキャンペーンに加わっていた県の関係職員は「山の日制定で、登山や山の環境に関するさまざまな取り組みが山岳県長野で活発になりそうです」と話していました。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説