新時代のホンダ「モトコンポ」誕生か? “電気自動車への電力供給”&“ラストワンマイルの移動手段”を両立!? 北米での「見逃せない特許」とは?
往年の人気作がレンジエクステンダーに進化?
1981年、ホンダはコンパクトカー「シティ」のデビューに併せて、「モトコンポ」という50ccの小型原付バイクを市場投入しました。 【画像】「えっ!…」アメリカで特許申請中! これがホンダが思案中の現代版「モトコンポ」です(13枚)
ハンドル、シート、ステップが折りたためる「モトコンポ」の全長は、わずか1185mm。「シティ」のラゲッジスペースに積み込み、目的地での細々とした移動に「モトコンポ」が活躍するというコンセプトでした。 あれから43年。まさかホンダが、アメリカにおける特許権申請書類で「シティ」と「モトコンポ」を復活させるとは、誰も想像していなかったでしょう。特許申請図に描かれたイラストが、どう見ても「シティ」と「モトコンポ」にしか見えないのです。 ホンダがアメリカで特許権を申請しているのは、電気自動車のレンジエクステンダー(航続距離延長装置)に“サドルつき車両”を活用するという技術です。 具体的に、どのような乗り物であるかは明言されていませんが、特許図面から推察するに、「モトコンポ」のようなものであろうことがうかがえます。 レンジエクステンダー自体は珍しいものではありません。例えば、BMWが「i3」に、同社のスクーター「C650GT」ゆずりの650cc2気筒エンジンを搭載していました。このスクーターのエンジンは最高出力60psですが、駆動力をもたらすものではなく、あくまでも発電してバッテリーに電力を供給するためのものでした。 ホンダの特許権申請書には、「充電インフラのない場所では電気自動車の性能が制限される。そのため、電気自動車のバッテリーを充電し、ラストマイル接続を提供するシステムが必要」と記されています。 “サドルつき車両”はクルマのラゲッジスペースにあるポートに接続でき、運転席からのスイッチ操作でレンジエクステンダーとして起動できるようです。排ガスはファンで換気される、とのことですが、詳細な仕組みは不明です。 当たり前のことですが、特許権申請書は発売直前の製品を示すものではありません。ホンダがこのアイデアを実現させるには、おそらく数年の開発期間を必要とするでしょう。 ●“外づけ内燃エンジン”で分類はPHEVから電気自動車へ 余談ですが、アメリカでは今、「モトコンポ」ならぬ「モトコンパクト」が話題になっています。これは2023年9月に北米市場向けに発表された、ホンダの折りたたみ式電動モビリティです。 「モトコンポ」よりも小さくて軽く、持ち運びや車載が容易なものです。最高速度は約40km/h、航続距離約19km、充電時間約3時間30分と、目的地における“ラストワンマイル”と呼ばれる短距離移動に適しています。 「モトコンパクト」は、ホンダの電気自動車「プロローグ」のアクセサリーとしても展開予定で、車内での充電も可能。995ドル(約15万円)というお手ごろ価格も話題になっています。「モトコンポ」の現代版と呼んでも差し支えないでしょう。 「モトコンパクト」が搭載する電池を大型化すれば、レンジエクステンダーになる気がしなくもありませんが、ならば最初から、電気自動車の電池容量を増やす方が理に適っているのでしょうね。 各国の規制内容によって異なりますが、一般的に内燃式エンジンのレンジエクステンダーを搭載する電気自動車は「電気自動車」ではなく「プラグインハイブリッド車(PHEV)」というカテゴリーに分類されがちです。 もし、同じ車両でも、内燃式エンジンのレンジエクステンダーを“別売り”にすることで「電気自動車」に分類されることになれば……といろいろと思うところはあります。 いずれにせよ、クルマとバイクを統合して双方の可能性を最大限に引き出すというアイデアが、ホンダでは今も生きているのは感慨深いですね。
古賀貴司(自動車王国)