「視力が1.0未満」の割合が過去最高に。「子どもの近視」は大人が想像する以上に深刻だ
■目の長さが大人並みに 眼軸とは、要は目の奥行きの長さです。眼軸が長いほど、近視が強いとされています。 調査の結果は驚くべきものでした。 小学1年生の平均で男子が22.96㎜、女子が22.35㎜。小学6年生の平均では男子が24.22㎜、女子が23.75㎜――。成人の平均が24㎜程度です。つまり、なんと、小学校高学年で眼軸の長さが大人並みに長くなっている――つまり、近視が非常に進んでいることが明らかになったのです。
さらに、中学3年生では、男子が24.61㎜、女子が24.18㎜と、さらに長くなっていることが判明しました。 最新の研究では、一度伸びた眼軸が場合によっては短くなる可能性が報告され始めてはいます。ただ現状では、身長と同じで、一度伸びると短くなることはほとんどないというのが一般的な認識です。目の成長期は20歳くらいまで続きます。最終的にはどこまで伸びてしまうのでしょうか。 この2つの調査結果は、子どもたちの目に大きな変化が起きていることを物語っています。
ちなみに2022年調査では、中学3年生でメガネやコンタクトレンズをしている子の割合は男子で4割、女子で5割にも上っています。 目はもともと、近くも遠くもくっきり見えるようにとても精密にプログラムされています。それなのに、どうしてこんなことが起きてしまうのでしょうか。 プログラムを狂わせるのが、今の近視化しやすい環境です。 野生で生きる猫は遠くがよく見えます。それに対して、家の中で飼っている猫は決まって近視になっています。近くのものばかりを見るようになっているためです。野生で生きる猫が近視だったら、エサを見つけられないし、見つけてもつかまえられません。しかし、家猫は、そんなことは必要がないわけです。このような、近くを見る作業のことを、近見作業といいます。
人間も同じです。現代の暮らしで近見作業が増えたことで、生来のプログラムが狂い、近視になりやすくなっているのです。大人になってからも油断できませんが、とくに「目の成長期」に、近くのものばかり見ていることの影響ははかりしれません。 背景の一つには、小さいころからスマートフォンやタブレットを使い始める影響が指摘されています。日本でも、国の「GIGAスクール構想」のもと、全国の公立小・中学校に通う子どもたちに情報端末が一人1台配備されました。