デジマにも物流にも「 ビームス らしさ」を盛り込む:ビームス取締役 ビームスクリエイティブ社長 池内光氏
「人の温かみ」をデジタルで再現
──デジタルマーケティング領域でビームスらしい注目の施策は? ECの販売面では精度が非常に高く、効果や効率を数字で測りながら運営できている。それをもう一段進化させ、効率や効果に特化した取り組みや単なるモノ売りだけでない、「ブランディングにもつながるトライアル」や「プラスアルファの付加価値を付けられるコミュニケーション」を模索し強く推進し始めている。別動隊で動いていたブランドマーケティングとデジタルマーケティングで情報を連携するとともに、効果測定も売上だけでないところにもしっかりと目標設定している。 少し前になるが、そのひとつの事例が全社員による「ありがとうプロジェクト」だ。ECは自動化などによって配送のリードタイムが短くなり、より早く届けられるようになるなど精度が高まる一方で、温かみのようなものが見えにくくなってしまっていた。特にコロナ期はリアルでの接客ができにくいなかで、人の温かみを感じていただくための取り組みができないかと、スタッフの発案で全社員が「ありがとう」の手書きメッセージを荷物に入れた。 たとえばビームス プラスの商品を買っていただいたのであれば、ECサイトの再訪時に、その担当バイヤーのメッセージに加え、QRコードを読み取るとメッセージ動画が流れるような仕掛けもした。計7万枚を配布したのでスタッフ3300人が1人20枚以上、代表の設楽をはじめ経営陣も参加した。 コロナの余波で、ECはピーク時には40%弱まで高まったが、今はリアルが戻ってきて30%前後に落ち着いている。自社ECと他社ECでは55対45ぐらいになっている。どこまで使い分けをされてるかはわからないが、いわゆる「ファン化」をさまざな形で推進するためには、速いとか安いというだけでない、エモーショナルの部分にしっかりとコミットしていくことが重要だ。顧客化に繋がっていくことをしっかりと継続的に行っていきたい。 ──ロジスティクスをアップデートするため、27億円を投じて今年9月に物流拠点を東京・深川に移転するというが、その要点とは? 物流はどうしても人の手による作業が多くなり、他社も含めてボトルネックがあるとずっと感じていた。しかもビームスには色別、サイズ別で30万超のアイテムがあり、洋服だけでなく家具やアートのような1点ものや定型にはまらないものも多すぎて手作業が多かった。B2Bビジネスを強化するとさらに扱う商材も広がってくる。 そこで、2つのロジスティクス拠点を集約し、現在メインで稼働している東陽町の約2倍の1万坪に拡張する。世界初の試みを含めて、マテハンや可動棚など自動化の仕組みも多く導入し、できる限り負荷を軽減するとともに、新しいビジネスに対応する仕組み作りを行っていきたい。RFIDも引き続き活用していく。