「のぞかれる」と炎上から7カ月...「ダンボール授乳室」のノウハウと利点生かし「トイレ個室」に 「災害時に安心を」メーカーの思い
能登半島地震により、被災した多くの地域が断水にみまわれ、「トイレ不足」が問題に。そんななか改良された「ダンボール授乳室」のノウハウを活かした「簡易設置型トイレ個室」が発表されました。 【写真】個室の中はどうなってる? トイレットペーパー補充の工夫も 板野紙工が「防災用品」として開発したダンボール製の授乳室「簡易設置型授乳室」(以下、ダンボール授乳室)。日本道路建設業協会と全国道の駅連絡会の提供により、道の駅に昨年9月13日から設置される際、「カーテンで閉めるだけって」「のぞかれるかも」といった防犯や安全性に対する不安の声がわきあがったのも記憶に新しいところ。それらの声を受け、施錠でき、「空室・在室」を表示する前扉などの改良を11月に加えています。 その経験を踏まえ、板野紙工が避難所でのトイレ不足を解消するために開発されたのが防災用 「簡易設置型トイレ個室」です。外壁のパネルの装飾以外は「ダンボール授乳室」と似ているようですが、どのような対策がされているのでしょうか。板野紙工に聞きました。
「ダンボールだからこそのメリットが…」
今回の「簡易設置型トイレ個室」は水洗機能などはなく、中に簡易トイレを別途置いての”目隠し”が大きな目的となります。 「被災時であっても生理現象は止められず、トイレに想定以上の人数が押し寄せる可能性があります。トイレへ行く回数を減らすために排便、排尿の我慢、それに伴う飲食の我慢を極力なくしたいという気持ちで開発にあたりました。避難施設のトイレが断水で流せず、個人または自治体で用意していた『簡易トイレ』(携帯トイレ)を使う場合、目隠しとなる『囲い』が不足すれば、用を足しにくい状況となります。被災後、早期の段階でトイレは必要になることから、避難生活の状況に合わせて平素から『簡易設置型トイレ個室』を一定数備蓄することをご提案いたします」と担当者。 「ダンボール授乳室」との構造上の大きな違いは、「トイレットペーパーホルダー」の設置と外開きに変更された「扉」です。慌ただしい避難所で、補充の手間や回数が省けるように複数のトイレットペーパーのストックが可能な仕様になっています。また、授乳室はトイレ個室よりも室内が広く、母親が子どもを抱いて荷物を持っていても扉を肩で押せば中に入れるように入口の扉を「内開き」にしていましたが、トイレ個室は外開きの方が室内を広く使えるため変更。在室・空室表示のための、扉の『窓』を見やすいように拡大されています。 さらに、トイレ以外の用途にも使用可能。「個室内で、ハンガーやS字フックをパネルのスリットへかけて使うことができます。避難所の状況に合わせて臨機応変に『更衣室』としても便利に使い分けていただければと思います」。 大型ピクトグラムが付属され、「赤」で「女子トイレ」「女子更衣室」、「青」で「男子トイレ」「男子更衣室」、「ピンク」で「授乳室」であることを示し、遠くからも用途がひと目でわかります。使用する性別を分けないトイレを置きたいなど、ピクトグラムにない用途の場合はダンボールに直接書き込んだり、張り紙やパネルなどを貼りつけることもできます。 一方、消防法の規定などから天井を塞がない形状は「ダンボール授乳室」同様です。「のぞかれるかも」と不安を感じる人がいる可能性もあるため、使用時にはパネルの梱包材を天井に被せて使用することもできるとのことです。ただし、安全な使用のために製品同梱の取扱説明書を確認した上での設置が望まれます。 入口に段差がないので、高齢者や幼児、身体上の不安がある人も入りやすく、スライド式ロックの鍵は施錠が簡単であること、内部に約1メートル角の広さがあるので、保護者が幼児に付き添い可能なことも構造上の利点として挙げています。 さらに、「使用後は資源ごみとして処理ができるため、撤収時に取り扱いやすい。除菌・消毒などの手間を考えると、特に災害後・緊急時には、再度備蓄ではなく、廃棄することが大半ではないかと思われます」と、ダンボールという”素材”が長所となっています。