学校に行けない先生 心を病み休職、直後に学年主任 整わぬ復職支援
「学年主任をお願いしたい」。広島県内の小学校に勤める50代の女性教諭は2020年春、管理職に言われて耳を疑った。適応障害で11カ月休職し、復帰した直後。このタイミングで学年主任なんて―。言葉をぐっとのみこんで引き受けた。 【グラフ】精神疾患で休職した公立学校の教員数の推移 頭がなかなか働かず、職員会議のスピードについていけなかった。テストの採点にも時間がかかり、保護者へ手紙を書く手が震えた。帰宅時間はずるずる遅くなった。困り事を同僚や上司に伝える気力は湧かなかった。
■復帰から3カ月で再び休職
同じ学年を担当する教諭2人は次第に、学年主任の自分がいないところで物事を決めるようになった。「仲間外れにされているのでは」とも思ったが、抗議する気力も体力も残っていなかった。復帰から3カ月後、再び休んだ。それから職場に戻ったのは1年9カ月後の22年春だった。 別の50代の小学校教諭の女性も語る。「休職明けに目の前にあるのは、階段ではなく、見上げるような壁なんです」 提案を校長から却下され続けてストレスがたまり、医師に適応障害と診断されて休職した。18年春に別の小学校で担任として復職。本音を言うと体が慣れるまで半日勤務など短時間で働きたかったが、担任になった以上は朝から晩まで働くしかなかった。「助走なしの全力疾走だった」と振り返る。しんどくて放課後の保健室のベッドにいると、養護教諭の視線が気になり、仕方なく資料室の床に横になった。 一般的に、復職後の役職や働き方を決めるのは現場の校長だ。女性は「休職明けの人には、管理職が『無理されないでくださいね』『困ったことがあれば、いつでも言ってください』と声をかけながら働き方を調節してほしい」と願う。
■学校の機能維持に必死
教職員のストレスや多忙について研究している美作大(津山市)児童学科の高木亮准教授は「学校運営において、休職や休職明けの先生へ配慮する余裕がない」と指摘する。各校の人員配置はぎりぎりで、周りの教員は児童や生徒に欠員の影響が及ばないように学校の機能を維持するのに必死だからだ。 学校はグローバル化や特別支援教育の充実、子どもの多様性への対応を迫られている。教職員への期待は大きい。「市場における消費者のように、保護者が圧倒的に優位な構造が学校にも生まれている。先生は無理をせず、保護者たちに嫌われるのを恐れない気持ちを持つことも大切」としている。
中国新聞社