「千年古びない浮気描写」の妙を角田光代と語る 源氏物語の新訳に挑んだ5年がもたらしたもの
■全部嫌になってしまった ――実際、書き終えた後は? 次の連載の仕事がすぐ後に決まっていたのですが、資料を読んで構想を膨らませたり、書き進めたりといった、源氏の前にはすらすらできていたことができなくなっているのに気づきました。新聞連載なので毎日書くには書くけれど、どうも調子が戻らないないな……と。 仕事に対する考え方や、小説観、書きたいものも変わってしまったのだと思います。以前ならいろいろな案件を同時進行しながら、自分の気持ちが追い付いていなくても書けましたが、そんなことをしたくなくなっていた、全部嫌になってしまった、という感じです。
源氏の何が自分にそう作用したのかは、結局今でもわからない。でも、すごく大きく変わってしまったのは確かです。 後編:「全部嫌になった」角田光代、34年目の働き方改革
長瀧 菜摘 :東洋経済 記者