先進国の上から目線の「人権の押し付け」に気を付けよ
有力国との協力
さらに、日本はGSの中の有力国の大部分と親しい関係にあることも重要である。 言うまでもなく、インドネシアとは長年の友好国である。インドは21世紀になって急速に関係が深まった。そしてインドはまだまだ貧しく、日本の協力を必要としている。中国との地政学的対立を抱えているので、インドの発展は日本の利益である。そしてインドは中国などと比べれば、周辺国を圧迫する程度はやや小さい。トルコとも古くからの友好国である。ブラジルも多数の日系人の存在、安保理改革のパートナーとして、深い関係を持つ。拡大BRICSにおけるイランやエジプトも友好国である。すでにある信頼関係を前提に、真剣に、なぜロシアのウクライナ侵攻が許せないものなのか、じっくり話せば、わかってくれる国も少なくないと思う。 中東については、日本に対する感触はよい。JICAではエジプトの要請により、エジプトに日本式小学校を200校建設した。そこでは金持ちの子も、貧しい子も同じように床掃除をする。それをシーシ大統領はとても気に入ったようだ。それに産油国のリーダーたちは、いつか原油がなくなった時にどうするかという観点から、日本の勤労に高い関心を持っている。こういう観点から、中東および北アフリカの有力国と、じっくり話し合うことが必要であり、可能である。 以上のように、日本はGSの中の小国を中心に接触し、またGS中の有力国と個別に接触していくべきである。 ※本記事は、北岡伸一『覇権なき時代の世界地図』(新潮選書)に基づいて作成したものです。
北岡伸一(きたおか・しんいち) 1948年、奈良県生まれ。東京大学名誉教授。国際協力機構(JICA)特別顧問。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。立教大学教授、東京大学教授、国連大使(国連代表部次席代表)、国際大学学長、JICA理事長等を歴任。2011年、紫綬褒章受章。著書に『清沢洌 日米関係への洞察』(サントリー学芸賞受賞)、『日米関係のリアリズム』(読売論壇賞受賞)、『自民党 政権党の38年』(吉野作造賞受賞)、『国連の政治力学 日本はどこにいるのか』『外交的思考』『世界地図を読み直す 協力と均衡の地政学』『明治維新の意味』など。 デイリー新潮編集部
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