農業が開く 自立への道 ひきこもり脱却へ NPO
人手不足の農家と結ぶ
平塚市のNPO法人ぜんしんは、人手不足に悩む農家と不登校やひきこもり、未就労者をつなぎ、利用者の自立と生産現場の労働力確保を支援している。農作業体験を通じ、仕事のやりがいや楽しさを知る機会を提供。実際に農家で働き始める人も輩出している。 ゲームを活用した就労トレーニングや適職を探す相談会などを手がける同法人は、市内では水稲やキュウリなどの生産が盛んなことに着目。市が新規就農者の増加などを目指していることもあり、市民団体が設定した地域の課題を市と協働で解決する「市民提案型協働事業」の一環で、農業を通じた自立支援に動き出した。 市の紹介で、法人の利用者らは昨年から稲作作業の受託組織、湘南ライスセンターで種まきや収穫した米の袋詰めなどを体験。今年からは利用者2人が市内のキュウリ農家へ出向き、収穫などに従事。1人は正式にキュウリ農家で働き始めた。 10月下旬には、これまでの農作業の振り返りと体験を通じて栽培した米の試食会を開いた。6人が参加し、楽しかったことや難しかったことなどを発表し、自らの手で育てた新米「はるみ」を味わった。 法人の柳川涼司理事長は「焦らず、できることから自信を取り戻してもらえたらうれしい。今後も利用者に寄り添い、農業分野とも連携しながら自立をサポートしたい」と話す。
全国推計146万人 就職復帰後押し
「自分に合った職に就けた」「きっかけは転職」。ひきこもりの実態把握を目的とした政府の調査で、脱却のきっかけに一定数の人が就職や転職を挙げた。全国のひきこもりの人数は146万人(2022年時点)と推計され、社会復帰をどう支援するかが課題となっている。 政府によるひきこもり推計人数の内訳は15~39歳が62万人、40~64歳が84万人。両世代とも増加傾向にあるという。 ひきこもり脱却のきっかけはさまざまで、仕事が後押しするケースもある。10~30代の状態把握を目的とした政府調査(15年)では、就職を機に「やりたいことが少しずつ見えてきた」(男性20~24歳)、「アルバイトを始めて社会との関わりを持った」(女性35~39歳)ことなどを転機に挙げる声が出ていた。
日本農業新聞