争点は医療提供されなかった違法性、ウィシュマさん訴訟 地裁が提示
名古屋出入国在留管理局で2021年3月に亡くなったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)を巡る国賠訴訟の第15回弁論が27日、名古屋地裁であった。大竹敬人裁判長は、訴訟の争点を「ウィシュマさんに必要な医療が提供されなかったことの(国家賠償法上の)違法性」などと示し、遺族側と国側に争点に基づく立証計画の提出を求めた。 【写真】名古屋出入国在留管理局で収容中に死亡したウィシュマさんをめぐる国賠訴訟の弁論後に会見する遺族と弁護団=2024年11月27日、名古屋市中区、渡辺杏果撮影 大竹裁判長は争点として、(1)国家賠償法上の違法性があるか(2)義務違反と死亡との因果関係(3)因果関係が認められたときの損害――を提示。(1)はさらに、ウィシュマさんの収容を継続していた違法性と、必要な医療が提供されなかったことの違法性の二つに細分化した。今後は、この必要な医療が提供されなかったことの違法性から先に検討するという。 22年6月に第1回弁論が開かれて以降、双方が主張する争点には開きがあった。 国側は、病理鑑定書では「低栄養と脱水」のみを死因としておらず、死亡にいたるまでのメカニズム(機序)を争点とすべきだと主張していた。一方で遺族側はこの病理鑑定書に基づいて死因は低栄養と脱水であり、争点にはならないとし、必要な医療上の措置をとっていれば死亡は回避できたと訴えていた。 今回、大竹裁判長が示した争点では、国側が主張してきた、死因や機序という言葉は含まれなかった。遺族側の弁護団は弁論後の会見で、「こういう宿題の出され方でよかった」と語った。だが、今後の審理で引き続き論点に上がる可能性もあるという。 弁護団は「誰がどんな義務違反を犯し、ウィシュマさんの死亡につながったか、よりわかりやすく整理したい」と話した。(渡辺杏果)
朝日新聞社