メルセデス代表、ハミルトン離脱のタイミングには驚きも「契約書にサインする時から”ありうる”ことだと意識してきた」
ルイス・ハミルトンは、メルセデスを離れフェラーリに移籍するという衝撃的な決断を下した。この移籍の実現には、昨年夏に彼がメルセデスと結んだ2年契約に、2024年限りでの解除条項が存在していたことも大きく影響しているだろう。 【ギャラリー】ルイス・ハミルトン、全F1マシン(マクラーレン~メルセデス) この解除条項は、2024年のパフォーマンスが期待通りではなかった場合に備え、2025年に向けて両者にある程度の自由を与えるための妥協的な取り決めだったと理解されている。 これはメルセデスがハミルトンとの契約を継続したくないと感じた場合、別のドライバーを追い求める自由があることを意味する一方で、ハミルトンが他チームへの移籍を選んだ場合、7度チャンピオンに輝いた偉大なドライバーが流出する可能性があることを意味する。 ハミルトンはフェラーリと契約し、今週メルセデスの代表であるトト・ウルフと直接会って、現行契約の途中解除条項を行使することを伝えた。まさにメルセデスが懸念していたことが起きてしまったのだ。 2月2日にメディアの取材に応じたウルフ代表は、メルセデスはハミルトンの移籍というリスクに目をつぶっていたわけではないと話した。 ハミルトンのメルセデス離脱を促した状況について、ウルフ代表は次のように語った。 「クリスマス期間に入った時、我々の足並みは非常に揃っていた。公の場でも、チーム内でも我々はそう言っていた。なぜ心変わりしたのかはルイスに聞くべきだ」 「彼が私にした説明については理解できる。新たな挑戦が必要で、違う環境を求めていた。何か他のことをする最後のチャンスだったのかもしれない」 「我々は注目される存在だし、短期契約を結ぶことで双方にメリットがあることはわかっていた」 「長期契約にコミットすることはできなかった。そして彼は離脱という選択肢を選んだ。我々は考えを変えるという可能性について完全に尊重している。様々な事情があるんだ。フェラーリに移籍するのも、もしかしたらキャリア最後の仕事かもしれない。ダイスを振るようなモノだ。私はその決断に従うよ」 ウルフ代表は、ハミルトンに長期契約を与えようとする、メルセデスにはないフェラーリの熱意が、移籍の重要な要素だったと考えている。 「フェラーリと長期契約を結び、キャリアの最後に大きな仕事をする機会があることも、考慮する要素のひとつだったのかもしれない」 「結局のところ、彼は最も成功したドライバーだ。我々はセンセーショナルな旅をともにした。それは歴史に残ることだし、メルセデスの歴史にも残ることだ」 ウルフ代表は、ハミルトンのフェラーリ移籍の噂が事前に囁かれていたことから、ハミルトンがフェラーリに引き抜かれたこと自体はあまりショックではなかったという。 しかしそのタイミングにはかなり驚かされたようだ。ウルフ代表が移籍を知ったのは、1月31日にオックスフォードにあるウルフ代表の自宅でハミルトンと朝食ミーティングをした時だった。 「2、3日前に噂は聞いていたものの、タイミングには驚いた。我々は朝食を一緒に食べる予定だったんだ」 「そして水曜日の朝、彼がそのニュースを打ち明けたんだ」 「我々が一緒にいると、彼はとても率直になるんだ。だから、彼が『これが僕のやろうとしていることだ』と言った時点で、それは覆せない事実であり、私は彼を説得しようとはしなかった」 「コミュニケーションについてどうするか? タイミングは? どうやってチームを守るのがベストなのか? そして、この2024年を2人のドライバーとともに成功させるために、気まずくならないようにするにはどうすればいいのか? ただ前を見て、そんなことを考えた」 ハミルトンの決断に傷ついたかと聞かれ、ウルフ代表は否定。契約を交わした時から、起こりうることだと考えていたと語った。 「いいや、傷ついていない。なぜなら私は静さを保ち、2024年シーズンをどのようにチーム運営するのがベストなのか、そして今後どのような決断が必要なのかを決める必要があるからだ」 「私が大好きな人が、いなくなるわけではない。彼はただチームを変えるだけだ。我々が契約書にサインする際、それが起こりうることを強く意識してきた」 「このタイミングはサプライズだったかもしれないが、私はこれまで何度も、”目の前を泳ぐブラックスワン”(予測不可能な事象が起きること)を目にしてきたんだ。F1では、機敏さと状況の変化を受け入れられるかどうかがすべてだと思う」
Jonathan Noble