【伝説の8番】曙、3日目のハワイ対決で小錦に敗れて奮起 初Vへ8日目に単独トップ「夢のようだよ」…92年夏場所
1992年夏場所は、関脇・曙が初優勝を果たした。この場所は、大関・小錦の横綱昇進なるかが焦点となり、若花田、貴花田の“若貴フィーバー”でも盛り上がっていた。 初日は寺尾、2日目も久島海に連勝した曙は、3日目に小錦との“ハワイ対決”を迎えた。204センチ、233キロの曙と、187センチ、275キロの小錦が激しくぶつかり合った。曙の88センチのリーチが小錦ののどをとらえた。しかし、小錦は一歩も下がらない。長い腕をはね上げられ、左を差されると、後退。6秒1のあっけない敗戦となった。仕切りからグッと、小錦をにらみ付け、気合十分の曙だったが、完敗に「自分の相撲が取れなかった」とうなだれた。 それでも、4日目のハワイ対決では、すくい投げで小結・武蔵丸を下した。「もう同じ三役なんだから負けたくないよ」と、ライバル意識をむきだしにした。5日目は東前頭5枚目・貴闘力を突き倒し、6日目に同4枚目・大翔鳳を突き落とし、1敗は小結・安芸ノ島と2人だけとなった。「先場所は始まる前から大関とりと言われて、緊張で体はカチカチ。でもいい勉強をしました。今場所は落ち着いて取れている」と表情を緩めた。91年11月場所を西前頭筆頭で8勝7敗、92年1月場所を小結で優勝争いを展開、13勝2敗としたため、同年3月場所で大関昇進の可能性があったが、8勝7敗に終わっていた。 7日目に西前頭3枚目・琴富士をわずか1秒9で突き出し、8日目は東前頭筆頭・三杉里対戦した。勢いは止まらない。たった4発で土俵の外にたたき出した。安芸ノ島が敗れたため、ついに単独トップに立った。「夢のようだよ。トップなんて…」とニコッと笑った。3月場所は8勝だったものの、この場所、13勝すれば、直近3場所で34勝となり、大関当確ラインに到達する。鏡山審判部長(元横綱・柏戸)は「このまま走れば抜てきすることもあり得る」と話し、初優勝と大関取りが現実味を帯びてきた。(久浦 真一)=つづく= ◇曙 太郎(あけぼの・たろう)本名・曙太郎。1969年5月8日、米ハワイ州オアフ島出身。88年3月場所、初土俵。90年9月場所、新入幕。93年1月場所後、横綱に昇進。優勝11回。得意は突き、押し。01年1月場所で引退。通算成績は654勝232敗181休。03年に格闘家に転向。24年4月、死去(享年54)。現役時代は204センチ、233キロ。
報知新聞社