「スウィングの始動前に、肺の奥底に少しだけ息を吸い込みお腹に溜めると、インパクトで力が入る」――金井清一|ゴルフは名言でうまくなる
「ゴルフスウィングでは、どのような呼吸法を行うとスムーズに振れて、かつ力も入るのか?」という疑問は、向上心のあるゴルファーなら、一度は考えたことがあるのではないだろうか。合気道などの武道では、よく呼吸法によって力を出すと言われているので、ゴルフスウィングにも通じるのではないかと思うからだ。
ゴルフスウィングと呼吸法
テニスプレーヤーには、ショットの瞬間に「アゥッ!」とか「ウ~ン」というような大きな声を出してインパクトするプロ選手が結構いる。有名なところではシャラポワ選手などがそうだ。インパクトにかけて声を出すということは、息を吐きながらインパクトしたほうが力を出せるのだろうか。 空手の瓦割りの演武や、日本刀での居合切りの演武を行うときにも、「トリャー!」とか「トウッ!」のように大きな声を発している。これらは気合を示すためでもあるのだろうが、やはり一瞬に力を集中させる効果もあってのことではないだろうか。 そうであれば、ゴルフスウィングにおいても、声を出すかどうかはともかく、インパクトに向かって息を吐くような呼吸法が、飛距離をアップさせるということはないのだろうか。 こういう疑問を、レジェンドアマチュアの中部銀次郎さんに問いかけた記者がいたが、銀次郎さんの答えは「どういう風に呼吸するかなんて、考えたことがない」というものだった。子どものころからゴルフを始め、本能のおもむくままに練習してきたゴルファーは、呼吸のことなど何も考えずに力の入るスウィングを身に付けてしまうから、そういう回答になるのだろう。
スウィング中の呼吸の感覚はプロでもさまざま
実際、多くのプロに同じ質問をしても、同様の返答が多いようだ。 アドレスの前には体の空気を全部吐きだし、ゆっくり吸いながら構える。そしてまた吐き出す。でも、スウィング中のことは考えてはいません。(田中秀道) スウィング中、息を止めながらも、吐きながらも振ることがある。その時、その時で違います。(奥田靖己) 僕は構えて息を吸って吐いて、それから止めたままスウィングしているようですね。無意識のうちにそんなリズムになったみたいです。(高橋勝成) 呼吸の大切さはバイロン・ネルソンも言っています。私の場合、スウィング中は特に呼吸をしている意識はありません。(ベン・クレンショー) 僕も含めて多くのプレーヤーが深呼吸を行っている。これはリラックスの鍵だ。でもスウィング中の呼吸についてはわからない。(ボブ・ツェー) スウィング中の呼吸だって? 特になにもしてないし、スウィングの間、どうなっているかなんてわからないよ。(ジェフ・スルーマン) これらのプロたちも、とても若いころからゴルフスウィングになじんできた俗にいうナチュラル・ゴルファーだから、「聞かれてみればこうしているかもしれないが、実際のところよくはわからない」と回答するのだろう。 これに対し、明確に呼吸法を意識している選手もいた。 飛ばしたかったらバックスウィングで深く吸い込み、インパクトかその直後で強く吐く!(中村寅吉) 「ボールに気合を乗せなきゃ思い通りにゃ飛ばないよ」という名言を残した寅さんは、バックスウィングで息を吸い、インパクトで強く吐くという呼吸法を意識的に実践していたらしい。 青木功プロも、明確にスウィング中の呼吸について解説していた。 「アドレスの時に息を吸って、3秒ほど吐くと肩の力が抜けて、上体がリラックスする。ここで止めておいて一気にフィニッシュまで振り切る。1回のスウィングに要する時間は2秒たらず。この間、吸いもしなければ吐きもしない」 青木プロは、スウィングを始める前に息を吐き、吐ききる少し前に少しだけ肺に空気を残しておいて息を止め、止めたままスウィングしていたようだ。 このように、呼吸に対して無意識の人、吐きながら打つという人、息を止めて打つという人とさまざまで、統一性がないように思える。また、日ごろから呼吸法を訓練することやショット前の深呼吸の重要性を語るレッスンは多く見られるが、スウィング中にどう呼吸すべきかを詳しく説明した例はあまり見当たらない。