不可能を可能にした奇跡のルアー『ゴーラム』! 重心移動2機がけを実現したエンジニアリングの矜持
完全同期がもたらした違和感のなさ
しかし予想通り、その開発にはかなりの労を要したという。 伊東「力学的あるいは工学的理論が当然必要ですし、時間も金額も相当掛かってしまいました。重心移動をただ2つ乗っけているだけではないんです」 不可能を可能にするかのような目的の元で開発が進められたゴーラムだが、得られた実釣性能は予想だにしないものだった。 伊東「なんと言いますか、嫌がられない波動を出すみたいなんですよね。ルアーに対してバスが躊躇しない印象があります」 完全同期という高いハードルが、釣果にも大きな影響を与えた。 伊東「完全にシンクロしているからこそ、ルアー前後の動きに変なディレイが起こらない。きっとそこでズレが生じると動きに違和感が生じてしまい、そういった部分で魚がルアーを見切るのではないかと思うようになりました。不自然じゃない波動に対しては、特別警戒する必要がないからチェイスする…みたいな。狙ってやったわけじゃないんですけどね。完全シンクロする2機の重心移動システムを開発した副産物とでもいいましょうか」。 しかし優れたルアーだからこその悩みもあるのだという。 伊東「ルアー名に147Fとあるのでサイズ展開を期待されるかもしれませんが、これがまた本当に難しい。完全同期させたままサイズ違いを出すには単なる図面の縮小拡大ではできません。そればかりか1から別のルアーを作るのと変わらなくなってしまう。他所から147Fのコピー品はまず出せないでしょうし、将来的にメガバスからバリエーションモデルを出すことができたら、本当に褒めてほしいですね(笑)」。 コンセプト、性能、ビジュアル。 そのすべてを兼ね備えて初めて完成された『意匠』に値し、評価される。 「グッドデザイン賞」。 受賞し続けることは、並大抵のことでは成り立たないのである。