アップルはなぜ中国で売れなくなったのか 2023年スマホ販売数世界トップとなるも苦戦続く
アップルのティム・クックCEOは3月21日夜、上海市静安区で開業する直営店のオープニングセレモニーに出席した。この店舗は、米国ニューヨーク5番街のアップルストアに次ぐ規模の中国における旗艦店だ。 かつてのCEOスティーブ・ジョブズ氏が中国に興味を示さなかったのとは打って変わり、クックCEOは中国市場を非常に重視し、毎年のように訪中している。米調査会社IDCによると、アップルの2023年のスマートフォン販売台数は、2010年以降で初めて韓国サムスン電子を上回り、世界トップとなった。 ところが、中国市場の状況はいくぶん異なる。アップルの中国における売上高は2023年10-12月期に208億ドル(約3兆2000億円)で、前年同期の239億ドル(約3兆7000億円)から13%減少した。 アップルは今年の春節(旧正月)前、初めて公式サイトで割引キャンペーンを実施した。春節を過ぎても、iPhone15シリーズは主なECサイトで1150元~1400元(約2万4000円~2万9000円)の値下げが続き、4588元(約9万6000円)で手に入るまでになった。 しかし値下げしても販売数が持ち直すことはなかった。中国情報通信研究院によると、アップルが今年2月に中国で出荷したスマートフォンは約240万台で、前年同期比で33%減と大幅に減少した。
販売代理店は「初めての赤字」
河北省でアップル認定の販売代理店Apple Premium Reseller(APR)を経営する張さんの話では「新製品はどれも売れ行きがいまひとつ」で、2023年は店をオープンさせた5年間で初めての赤字だったという。 張さんだけではない。アップル製品の販売数が減ったと感じている販売代理店は多く、「どの新製品も20~30%減ったようだ」と話す。 アップルはかなりの収益を上げているとはいえ、販売代理店の利益はそれほど多くない。ある業者はSNSで仕入れリストを公開し、利益は4%以下だと暴露した。つまり5000元(約10万円)のスマートフォンを販売しても、利益は200元(約4000円)にしかならないということだ。 またスマートフォンの主な販売チャネルはECサイトに移っており、実店舗には価格決定権はほとんどない。例えば拼多多(Pinduoduo)や京東集団(JDドットコム)では、独自の戦略に合わせて好きなタイミングで割引を実施できる。拼多多はiPhone15シリーズが発売されると400元(約8000円)の値下げに踏み切った。消費者は価格を比較して、オンラインでの購入を選ぶようになる。 SNSでは店をたたもうとするアップルの販売代理店が目立つ。アップル製品のみの取り扱いを諦めたケースもある。4店舗を展開するアップルの代理業者は今年、中国メーカーである小米(シャオミ)やOPPO、vivoの取り扱いも始めた。また別のAPRのオーナーはiPhone15の発売前、ある大手販売店から80万元(約1600万円)で店を譲ってほしいと持ち掛けられたが、同意しなかった。すると、わずか半年余りで価格は20万元(約400万円)にまで下がったという。