筑陽学園、反撃及ばず 春の挑戦、手応えつかみ夏へ /福岡
<センバツ甲子園> 第91回選抜高校野球大会第9日の31日、準々決勝で筑陽学園は東邦(愛知)と対戦し、2-7で敗れた。今大会初の先制点を四回に奪われ、その後リードを広げられた。四、七回に反撃し意地を見せたものの、及ばなかった。試合途中に強い雨が降る中、筑陽学園の一塁側アルプススタンドは最後まで懸命に声援を送り、ナインをねぎらう大きな拍手が続いた。【宗岡敬介、後藤奈緒】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ▽準々決勝 東邦 000205000=7 000100100=2 筑陽学園 「よくやった」「ここまでありがとう」 九回裏、最後の打者がフライに倒れると、息を詰めて見つめていたアルプスからため息がもれた。しかしすぐに、初出場で8強入りを果たしたナインをたたえる声が続いた。 出場32校のうち、昨秋の公式戦のチーム打率が3割8分6厘とトップの東邦打線。「インコースをどんどん攻めていこう」と、先発した西雄大投手(3年)が安打を許しながらも粘り強く投げ、三回までホームを踏ませなかった。 四回表に2点を先制されたが、すぐに打線が反撃する。先頭打者の弥富紘介選手(同)が直球をはじき返して内野安打で出塁。相手の失策で2死一、二塁とし、進藤勇也選手(同)の中前打で1点を返すと、アルプスはメガホンをたたいて大いに盛り上がった。 弥富選手の父直秀さん(55)は「一生懸命やっている。今日も勝って、帰らずにここに残るつもりです」。進藤選手の父誠さん(45)も「誰が打ってもチームが勝てばいい。(1、2回戦と同じ)3-2で勝利です」と逆転を願った。 四回に救援した菅井一輝投手(3年)が五回を無失点で切り抜けると、父輝文さん(44)は「心臓が飛び出そう。緊張はあると思うが、精いっぱい投げてほしい」と声援を送った。 だが、東邦打線が牙をむいた。六回1死二、三塁から西舘昂汰投手(3年)に継投するも、打者一巡の猛攻で一挙5点を失った。 それでも、選手たちは諦めない。七回に福岡大真選手(同)が右越え三塁打で出塁し、続く進藤選手の犠飛で2点目。吹奏楽部の竹丸明里部長(同)は「逆転するまで(得点時に演奏する)得点マーチを吹くつもりです。信じています」と雨の中、懸命の演奏を続けた。 だが、力尽き、筑陽学園の春の挑戦は終わった。ナインは夏に戻ると誓い、土を持ち帰らなかった。アルプス席で応援した尼ケ崎裕大選手(3年)は「選手たちはかっこよかった。夏は自分も戦力としてここに戻ってきたい」と力を込めた。 ◇アルプス席からエールで後押し ○…全国大会にも出場する強豪の筑陽学園応援リーダー部の19人が、アルプス席から選手にエールを送った。ナイン一人一人が選んだ曲などに振りを付け、15パターンほどの応援曲を用意した。昨夏の甲子園の応援動画を参考に、振り付けは3年生4人で考え、センバツ開幕の2週間前から練習に打ち込んだ。佐々木暖(はる)部長(3年)は「勝利の後押しができるよう、選手に届く大きな声と笑顔で応援します」と声を張り上げた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■青春譜 ◇「もっと上へ」と成長誓う 進藤勇也捕手=3年 2点を追う四回裏2死一、二塁の好機に打席が回った。「江口監督からバットを短く持つよう指示された」。今大会屈指の好投手、石川昂弥投手(3年)の投球を、指示通りコンパクトに振り抜いてセンター前にはじき返し、1点差に詰めた。 小学4年から捕手。中学のクラブチームは控えだったが、高校1年の秋から背番号2を背負い「配球のおもしろさを知った」。打者の素振りなど細かな情報を見逃さず配球を変える。「抑えたら投手のお陰、打たれたら捕手のせい」と、自分に厳しい。 プロ野球・ソフトバンクホークスの甲斐拓也捕手らの動画を見て送球などを研究する。どんな体勢でも盗塁を阻止できるよう、練習であえて横手でボールを投げることもある。 継投で勝ち上がったチームを支えてきた。自分なりに手応えも感じたが、8強入りにうれしさはない。「もっと上に行けるチーム。無失点で抑えられるようにしたい」。夏へ向けて成長を誓った。【宗岡敬介】 〔福岡都市圏版〕