「Jリーグでバリバリならこっちでもやれる。ただ…」ベルギー1部の日本代表コンビが体現する“欧州で活躍するためのヒント”【現地インタビュー】
「ヘントにはやっぱり日本人に対するリスペクトがある」
ワウター・フランケン監督が現地紙で「敦樹の成長が著しい。それは周りの協力あってのこと」だと言っていた。日本人以外の選手たちは、どのように伊藤のことを受け入れたのだろうか? 渡辺「ヘントにはやっぱり日本人に対するリスペクトがある。『こいつ、日本人か。ヨーロッパ、初めてか』となるのが普通で、パスが来ないとか、そういうことって本当にあるんですよ。だけど敦樹のことをみんな、最初から信頼してパスを出してましたからね」 伊藤「初めての海外挑戦だったので、信頼を築くのも時間がかかるかなと思ってましたが、みんなホント、良い人たちなんです。(しみじみと)ピッチ内外で優しいっす。知ってる日本語でしゃべりかけてくれたり、簡単な英語でわざわざ俺とコミュニケーションを取ってくれたり。そんなこと、しなくてもいいじゃないですか。まだ勉強中なので、俺は返せないですけれど、それなのに毎日喋りかけてくれるんです」 この4か月を伊藤はこう振り返る。 伊藤「あっという間でしたけれど、徐々に自分の中でスピード感に慣れてきたところもありますし、それなりの手応えを感じた4か月でした。サッカー以外のところでも、剛くんやダンくん、その他、ベルギーに住んでる日本人の方たちの手助けもあって、こっち来てから何も困ることなくここまで来れてます。サッカー以外のところでストレスを感じるかなと思ってたんですけれど、まったくストレスを感じることなく、サッカーに集中できる環境を作ってくれてました。そういう意味でもこの4か月は充実してましたね」 ふたりが悲鳴をあげたのは、ベルギーサッカーの過密日程。11月24日のアンデルレヒト戦を皮切りに12月26日のユニオン戦まで、ヘントは33日間で10試合も戦った。その中で渡辺は10試合中、9試合フル出場。伊藤は出場停止の1試合を除き9試合に絡み、8試合で先発した。 渡辺「1か月で10試合。日程が本当におかしいです。(11月28日のルガーノ戦から12月7日のシント・トロイデン戦まで)中2日の試合が4試合続くの、本当に止めてほしいです。ダメです。おかしいです。(伊藤に向かって)これを、今後もこなしていかないといけない。でも大丈夫。これを続けたら、俺みたいに(連戦を苦にしない選手に)なるから」 伊藤「去年は俺もACL(アジア・チャンピオンズリーグ)でキツかったですが、中2日で4試合続くことはなかった。しかもヘントは国をまたいだ中2日がこの1か月で3回(スイス、セルビア、北アイルランド)あったんです」 渡辺「木曜日に試合をして、金曜日にリカバリーして夜、ヘントの練習場に着くんです。そのまま土曜日に前日練習をして、日曜日にリーグ戦。だからここ最近、戦術練習なんてしたことがない。オフなんて2週間、3週間ないのが普通だし」 10月、27歳になった毎熊晟矢がAZで即戦力としてプレーする姿を見て、私はあらためて「Jリーグで経験を積んだトッププレーヤーは、フィジカル面も含めてオランダに来てすぐに順応できる」と感じた。そして、そのことを26歳で海を渡った伊藤にも感じた。 渡辺「Jリーグでバリバリやれている選手はこっちに来てもやれますよ。プレーの質も高いし、フィジカルもそう。ただメンタルです。気持ちの面とか環境とか、難しいことがたくさんあるので、そこで惑わされる選手は生き残れないです。俺はまだステップアップしているわけじゃないからまだ何にも言えませんが、能力があってもベルギーでダメだった選手というのは、やっぱりどこか、例えば監督と合わないとか、気持ちの面だと思います。能力はやはり高いから。周りのヤツに言われても気にしないとか、そういうところだと思います」 伊藤「Jリーグもレベルの高いリーグ。Jリーグの中で活躍しないとこっちに来るチャンスはない。技術的にもフィジカル的にも優れてないとそのチャンスすらないと思う。こっちに来てみないと分からないことがたくさんあると、自分も感じました。そういった意味で自分も挑戦して良かったと思ってます。まだまだこれから上に行くためにも、もっと自分を磨いていきたいです」
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