【デーブ大久保コラム】巨人と阪神のデッドヒートを見ると10.8の思い出がよみがえってきます
【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】 セ・リーグの優勝争いが大詰めを迎えています。巨人が有利ですが、阪神も粘っています。最終局面までもつれることはなかなかないとは思いますが、巨人ファン、阪神ファンともに先週は、ハラハラドキドキの週末を迎えたのではないでしょうか。 【選手データ】桑田真澄 プロフィール・通算成績 まあ、ハラハラドキドキをデーブが体験したというのはやはり「10.8」です。1994年の10月8日、ナゴヤ球場での中日対巨人です。プロ野球史上で唯一、最終戦時の勝率が同率首位で並んだチーム同士の直接対決。勝ったほうがリーグ優勝という大一番です。私も巨人の選手としてベンチ入りしていました。ただ、事前にスタメン出場はないということを聞いていましたので、気持ち的にはファンと同じような感じで「明日は楽しみだなあ」くらいでした。 前日のミーティングでは当時の長嶋茂雄監督に「今まで(1位の座を)一度も追い越されていないから、大丈夫」と笑顔で話してもらいました。「このときに、こんな大勝負なのに笑っていること自体がすごいなあ」と感心しました。 そして、打撃コーチだった中畑清さんが長嶋監督のところに、翌日のスターティングメンバーを持っていき、そのあと部屋に戻ってきました。私は中畑さんの部屋にお邪魔していたんですが、「2点ビハインドになったら、お前(デーブ)を出すからな」と言われたんです。 それを聞いた私は、急にドキドキしてきて、緊張でベッドに入っても目が覚めてしまう状態になりました。もう寝られないので「みんな何しているんだろう」と部屋を出て、名古屋の宿泊ホテルの廊下をウロウロ。部屋のドアの隙間から漏れる光を見て「ああ、みんな寝られないんだなあ」と。そして落合(落合博満)さんの部屋の前に行ったときでした……ブン! ブン! という音が。バットを振っていたんです! 落合さんはすごいなあ、と思いながらも、やはりオチさんさえ寝られないんだ、と思ってしまいました。 迎えた当日です。またも長嶋監督は笑顔です。そしてミーティングで「勝つのはわれわれだ!」という話で、チームはさらに一体になりました。私はブルペンで待機です。「2点は先には取られないように!」と願っていました。 試合が始まって巨人は先発三本柱である槙原(槙原寛己)さん、斎藤(斎藤雅樹)さん、桑田(桑田真澄)の順番で投げることは最初から知っていました。巨人はそれだけの臨戦態勢で臨みました。中日は先発・今中(今中慎二)が4回まで投げたあと、リリーフの山田(山田喜久夫)が登板をするのですが、デーブ的にはこの時点で勝ったと思いましたね。なぜなら私たちはエース3人が投げるのに、向こうは平常運転。長嶋監督の一試合に懸ける思いの強さが試合の分かれ目だったのではないでしょうか。 『週刊ベースボール』2024年10月7号(2024年9月25日発売)より
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